2026年4月23日、文部科学省の中央教育審議会「教育課程部会 外国語ワーキンググループ(第11回)」が開催され、次期学習指導要領に向けた外国語教育の論点が整理されました。
今回の資料で扱われたのは、単なる「英語の授業改善」ではありません。学習評価の簡素化、高校英語の必履修科目の履修免除、調整授業時数制度、多様な外国語、AI時代の教師・ALTの役割まで、学校現場と学習塾の両方に関係する大きな論点が並んでいます。
本記事では、この外国語ワーキンググループ第11回の重要ポイントを詳しく解説します。
Youtubeチャンネルでは動画解説も行っておりますので、こちらも合わせて御覧ください。
外国語WG第11回とは何か?
今回の会議は、次期学習指導要領に向けて、外国語教育の具体的な設計を詰めていくための会議です。
開催日は2026年4月23日。配付資料では、主に次のテーマが扱われています。
学習評価の在り方
柔軟な教育課程
指導体制・環境整備
多様な外国語
教職課程・教員免許制度との接続
小学校、中学校・高等学校作業部会からの報告

ポイントは、今回の議論が「英語をもっとやるか、減らすか」という単純な話ではないことです。
むしろ、AI翻訳や生成AIが当たり前になる時代に、学校で外国語を学ぶ意味をどう再定義するのか。その上で、評価、授業時数、教師の役割、学ぶ言語の多様性をどう設計し直すのか、という議論になっています。
ポイント1:学習評価は「5領域」を維持しつつ簡素化へ
まず大きいのが、学習評価の見直しです。

資料1では、外国語の評価について、引き続き5つの領域で評価する方向が示されています。5領域とは、次の領域です。
聞くこと
読むこと
話すこと(やり取り)
話すこと(発表)
書くこと
現行の外国語教育でも5領域は重要ですが、評価規準の作成プロセスが複雑になりやすいという課題があります。そこで今回、総則・評価特別部会の議論を踏まえて、評価の手順をシンプルにする方向性が示されています。
具体的には、国が「内容のまとまりごとの評価規準例」を示し、各学校がそれを一から作成する必要はなくする方向です。また、各学校が作成する「単元の目標」は、そのまま「単元の評価規準」として用いることを前提にする方向も示されています。
これは現場にとってかなり重要です。
評価規準づくりが形式的な作業になってしまうと、本来教師が力を注ぐべき「どんな活動で力を伸ばすか」「どんな課題で見取るか」に時間を使いにくくなります。今回の見直しは、評価を軽くするというより、評価を授業改善につなげやすくする方向だと捉えるべきです。
ただし、外国語では引き続き5領域をバランスよく見ることが重視されます。1つのパフォーマンステストで知識・技能と思考・判断・表現をあわせて評価することも、引き続き可能とする方向が示されています。
つまり、現場へのメッセージはこうです。
「評価書類の作成負担は減らす。ただし、実際に英語を使って聞く・読む・話す・書く力を見取る授業設計は、より重要になる」
ポイント2:高校英語で「CEFR B2以上」の履修免除が検討
今回もっとも注目されやすいのが、高校の必履修科目の履修免除です。

資料2では、高校入学時点で高度な外国語運用能力を持つ生徒について、一定の要件の下で必履修科目を免除し、別の発展的な学習に振り替える仕組みが検討されています。
外国語については、CEFRに対応した外部試験が複数あることを踏まえ、特定の試験名ではなく「CEFRレベル」を基準にする方向が示されています。そして、履修免除を認める水準としては、現行高校科目が概ねCEFR A2からB1レベルを念頭にしていることから、それを大きく上回る「B2レベル以上」が適当ではないかとされています。
これは、かなり実務的な意味を持ちます。
例えば、入学時点で英語力が非常に高い生徒に対して、全員一律に同じ英語コミュニケーションIを履修させるのではなく、発展的な英語、英語以外の外国語、大学の授業、海外サマースクール、専門機関による講座などへ学習を広げる余地が出てきます。
ただし、ここで誤解してはいけない点があります。

これは「英語ができる生徒は授業を減らせる」という制度ではありません。資料では、免除科目の単位数と同じ単位数を、振替科目等で修得する必要がある方向が示されています。つまり、高校卒業に必要な学習量を減らす仕組みではなく、学習内容をより発展的なものに置き換える仕組みです。
学校現場としては、対象者の判定、振替科目の設計、単位認定のルール、外部試験との関係をかなり慎重に整える必要があります。
塾にとっては、今後「高校入学時点でどの程度の英語力を持っているか」が、進学後の学びの選択肢に関わる可能性があります。英検準1級相当など、CEFR B2に対応する力を中学段階で目指す層にとっては、学習戦略の意味が変わってくるかもしれません。
ポイント3:高校英語科目は「総合」と「発信」へ整理の方向
資料2では、高校英語科目の改訂方向も示されています。

現行の「英語コミュニケーション」は、5領域を総合的に扱う趣旨をより明確にするため、仮称として「英語コミュニケーション(総合)」へ整理する方向が示されています。
一方、現行の「論理・表現」は、Production、つまり表現と、Interaction、つまりやり取りを通じた発信力を一層強化するため、仮称として「英語コミュニケーション(発信)」へ整理する方向が示されています。
ここで重要なのは、「論理・表現」がなくなるというより、科目の趣旨をよりわかりやすくし、受容と発信の関係を整理しようとしている点です。

現在の高校英語では、「英語コミュニケーション」と「論理・表現」の関係が、学校や先生によってやや見えにくくなることがあります。今回の方向性は、総合的な5領域の学習と、発信に焦点を当てた学習を、カリキュラム上より整理しやすくする狙いがあると読めます。
これは塾や予備校にとっても大きな論点です。今後の高校英語は、単語・文法・読解だけでなく、発信型の課題、プレゼン、ディスカッション、ライティング、やり取りをどう支えるかが、より重要になります。
ポイント4:調整授業時数制度で小中の外国語実践が広がる可能性
小中学校では、「調整授業時数制度」が外国語教育にも関わってきます。

資料2では、現行の教育課程特例校制度において、令和7年4月時点で教育課程特例校が1,915校あり、そのうち外国語に関連する内容の学校が1,483校あると示されています。
参考資料1では、さらに具体的な状況が示されています。
外国語に関連する教育課程特例校:1,483校
小学校低学年から外国語の授業を実施している学校:1,112校
小学校中学年から外国語科相当の内容を実施している学校:134校
小3から中3で標準時数より多く外国語の授業を実施している学校:461校
これらの実践は、今後、調整授業時数制度に統合される方向の中で、参照可能な事例として活用される可能性があります。
ここで注意したいのは、「早くから英語をやればよい」という単純な議論ではないことです。
資料では、小学校低学年から外国語に親しむ事例、小学校中学年から読む・書くを段階的に扱う事例、中学校で英語と探究的な学習を組み合わせる事例などが示されています。大事なのは、学校や地域の実態に応じて、外国語を何のために増やすのかを明確にすることです。
塾の視点では、小学校英語の地域差が今後さらに広がる可能性があります。公立小学校でも、地域によって英語の経験量がかなり違う状態になるかもしれません。中学入学時点での英語力差への対応は、今後ますます重要になります。
ポイント5:多様な外国語は「英語以外も学びたい」ニーズが背景
今回の資料で興味深いのが、多様な外国語に関する整理です。

資料2では、令和5年度に高等学校等で英語以外の外国語科目を開設している学校は603校、全体の約9.6%であり、延べ43,197人、約1.4%が16言語を学んでいると示されています。
言語別では、中国語、韓国・朝鮮語、フランス語、スペイン語、ドイツ語などが中心です。
また、高3生の調査では「英語以外の言語も学びたい」とする生徒が58.1%いることも示されています。これは、英語だけではなく、複数の言語や文化に触れたいニーズが一定程度存在することを示しています。
今後の方向性としては、英語以外の外国語を開設している学校名や言語の情報を共有すること、同じ言語を学ぶ学校同士の連携を進めること、各言語の専門機関や在京大使館、関係団体との連携を促進することが挙げられています。
また、オンラインによって多様な外国語の履修を可能にする講座の開設も検討されています。
これは、地方の学校にとって特に意味があります。地域に専門教員がいないから多様な外国語を開設できない、という制約を、オンラインや外部専門機関との連携でどこまで乗り越えられるか。ここが今後の実装のポイントになります。
AI時代の教師・ALTの役割も再定義へ
今回の資料では、AI時代の教師やALTの役割も明確に扱われています。

AI翻訳や生成AIが進む中で、教師の役割は「正解を教える人」だけではなくなります。資料では、授業デザイン、児童生徒の学ぶ意欲の向上、自律的な学習者の育成に向けた学び方の指導がより重要になるとされています。
また、AI時代だからこそ、人間同士のリアルなコミュニケーションが重要になるという視点も示されています。ALTとの効果的な連携、英語教師の留学など多様な経験の奨励、教師自身が外国語を学ぶ本質的意義を自分の言葉で子どもたちに伝えられるようにすることが論点になっています。
文科省は、全国の教師等に向けた大規模なオンライン研修、指導に参考となる動画や資料の作成、外国語(英語)コアカリキュラムの見直しなども方向性として示しています。
ここでのポイントは、「AIがあるから英語は不要」ではなく、「AIがあるからこそ、人間が外国語を使って何をするのかを考える教育へ移る」ということです。
教育関係者が注目すべきポイント
学校の先生が注目すべき点は、評価と授業設計です。
評価規準づくりは簡素化される方向ですが、5領域を通じた実際の言語活動、パフォーマンス課題、形成的評価の重要性はむしろ増します。書類を作る負担が減った分、授業中の見取りとフィードバックの質が問われるようになります。
高校の先生が注目すべき点は、履修免除と振替科目の設計です。
CEFR B2以上を基準とする方向が示されたとしても、それをどう学校の教育課程に落とし込むかは簡単ではありません。上位科目、学校設定科目、学校外学修をどのように組み合わせるか、対象生徒にどのような学びを提供するかが課題になります。
塾関係者が注目すべき点は、中学入学時・高校入学時の英語力差です。
小学校段階で外国語経験が厚い地域とそうでない地域、CEFR B2を目指す上位層と基礎定着が必要な層。その差がより見えやすくなる可能性があります。今後の英語指導は、学年一律ではなく、到達度別・目的別の設計がますます重要になります。
今後のスケジュール
今回の資料は、2026年4月23日時点のワーキンググループ配付資料であり、最終決定ではありません。
今後は、教育課程企画特別部会、総則・評価特別部会、各教科ワーキンググループ、教員養成部会などの議論を踏まえ、次期学習指導要領の具体化に向かっていくことになります。
現時点で確定事項として扱うのではなく、「方向性」と「論点」として押さえることが重要です。
特に注視すべきなのは、次の3点です。
高校の必履修科目の履修免除における具体的なCEFR基準と運用
評価規準例や単元評価の具体的な示され方
調整授業時数制度と外国語教育の接続
まとめ
今回の外国語ワーキンググループ第11回は、次期英語教育のかなり重要な分岐点です。
整理すると、重要ポイントは次の5つです。
外国語の評価は5領域を維持しつつ、評価規準作成の負担を簡素化する方向
高校英語ではCEFR B2以上を念頭に、必履修科目の履修免除・振替が検討
高校英語科目は「総合」と「発信」へ整理される方向
小中学校では調整授業時数制度により、外国語実践が広がる可能性
多様な外国語とAI時代の教師・ALTの役割が重要論点に
今回の議論は、学校現場にとっては評価とカリキュラムの再設計、塾にとっては英語力差への対応と上位層の学習戦略に直結します。
今後も次期学習指導要領に向けた議論の動向を注視していく必要があります。
参考資料
文部科学省「教育課程部会 外国語ワーキンググループ(第11回)配付資料」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/108/siryo/mext_00011.html資料1「学習評価の在り方」等について
https://www.mext.go.jp/content/20260423-mxt_kyoiku01-000049359_003.pdf資料2「柔軟な教育課程」、「指導体制・環境整備等」、「多様な外国語」について
https://www.mext.go.jp/content/20260423-mxt_kyoiku01-000049359_04.pdf参考資料1「外国語に関連する教育課程特例校の状況について」
https://www.mext.go.jp/content/20260423-mxt_kyoiku01-000049359_08.pdf令和6年度「英語教育実施状況調査」の結果について
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415043_00013.htm教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/mext_00010.html
この記事は塾にどう効くか
英語指導の設計に関わります。5領域の評価が簡素化される方向、高校では一定の英語力がある生徒の履修免除が検討されるなど、「英語ができる生徒」の扱いが変わる可能性があります。
外部検定の位置づけが相対的に上がるため、英検などの取得支援を塾でどこまでやるかという判断にも関わります。
保護者への説明材料になるか
英検を早く取らせる意味が説明しやすくなります。「取っておくと高校で有利になる可能性がある」という話は、現時点では確定していないので言い方に注意が要りますが、方向としては示せます。
AI翻訳の時代に英語を学ぶ意味を問われる場面が増えています。この記事の議論はそのまま答えの材料になります。
指導・カリキュラムへの影響
英検対策の位置づけを見直す余地があります。これまで「内申や入試で有利になるから」だった理由に、「高校での学び方が変わる可能性があるから」が加わります。
4技能をどう配分するかという設計にも関わります。評価が簡素化される方向でも、求められる力自体が減るわけではありません。
発信のネタとして使えるか
使えます。「英検 いつまでに 取る」は保護者の検索が多い語です。
自塾で書くなら、制度の解説より「うちの塾では英検をこの学年でここまで」という具体的な設計を示すほうが、問い合わせにつながります。
塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します
制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。
無料でHP診断を受ける