はじめに

2026年1月29日、文部科学省で重要な会議が開催されました。
中央教育審議会 教育課程部会「不登校児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ」の第4回会合です。
小中学校の不登校児童生徒数は約35万4千人。過去最多を更新し続けています。
この深刻な状況に対し、文部科学省は新たな制度設計を進めています。
今回は、第4回会合の内容を詳しく解説します。

動画でも解説しています

本記事の内容は、YouTubeでも詳しく解説しています。
▶️ https://youtu.be/YlGv4shwcwo

解説スライド:不登校/35万人時代/新制度が始まる!

不登校児童生徒の現状

まず、現状を確認しましょう。
令和6年度の不登校児童生徒数

  • 小中学校:約35万4千人(過去最多)

  • 高校を含む:約42万人

さらに深刻なのは、支援が届いていない層が存在することです。

  • 専門的な相談・指導を受けていない:38.8%(約13.4万人)

  • 90日以上の長期欠席:54.2%

12年連続で増加を続ける不登校。
しかし、約4割の子どもたちが専門的な支援につながっていません。

解説スライド:不登校児童生徒の現状/不登校児童生徒数の急増と増加傾向

現在の不登校対応における3つの課題

文部科学省は、現在の不登校対応に3つの課題を認識しています。

課題① 組織的・計画的な指導の欠如
現状では、個別の指導計画が作成されていないケースが多く、行き当たりばったりの対応になりがちです。
学校として組織的・計画的な指導体制が確保されていない。
これが1つ目の課題です。

課題② 評価の限界と意欲の低下
不登校の子どもが、自分の実態に合わせて下の学年の内容を学んでも、評価は原籍学級の基準で行われます。
そのため、どうしても低い評価になりやすい。
本人の努力が適切に評価に反映されず、学習意欲の減退を招いています。

課題③ 高校入試の地域間格差
不登校児童生徒の評価や入試での取り扱いは、都道府県ごとに対応が大きく異なります。

  • 神奈川県:全県立高校で調査書不使用、学力検査と面接のみ

  • 静岡・京都・佐賀:一部の学校で不登校特例選抜を実施

  • 茨城県:フリースクール等での学習成果を選抜資料に活用

住んでいる地域によって、進路選択の機会に不公平が生じているのが現状です。


WGの設置目的

解説スライド:WGの設置目的/不登校児童生徒に係る特別の教育課程WGの主な設置目的と背景

これらの課題を解決するために設置されたのが、このワーキンググループです。
目的は明確です。

「個々の不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を、必要に応じて編成・実施可能とする仕組みの構築」

つまり、学びの多様化学校を新設しなくても、既存の学校の中で、不登校の子どもに合わせた柔軟なカリキュラムを組めるようにするということです。
現在、全国に58校(2025年4月時点)の「学びの多様化学校」がありますが、設置には土地・施設・予算という大きな壁があります。
この新制度が実現すれば、支援の選択肢が大幅に広がります。


これまでの議論の流れ

第4回会合に至るまでの議論を振り返ります。
回   開催日      主な議題
第1回 令和7年10月7日  検討事項の全体像確認
第2回 令和7年11月4日  対象となる児童生徒の範囲
第3回 令和7年12月3日  教育活動の内容・授業時数
第4回 令和8年1月29日  個別の指導計画の在り方

第4回の中心議題は「個別の指導計画」でした。
この計画が、新しい制度の核になります。


解説スライド:これまでの議論の流れ/国 第2回会合(2025年11月)

文科省が示した「5つの検討視点」

第4回会合で、文部科学省は個別の指導計画を作成・運用する際の5つの検討視点を示しました。

解説スライド:個別の指導計画 | 5つの検討視点/1児童生徒本人の関与

これが今後の制度設計の基礎になります。

視点① 児童生徒自身が深く関与する
最も重視されたポイントです。
子ども自身が、自分の学びの計画づくりに主体的に参加する。
「やらされる学び」ではなく、「自分で決める学び」。
これによって、学習意欲や自己肯定感の回復につなげようという狙いがあります。

視点② 効果的かつ効率的な計画とする
不登校の子どもたちの心身の状況は日々変化します。
だから計画は、極めて簡素で柔軟に変更可能なものにする必要があります。
そして何より大事なのは、現場の負担軽減を最優先すること。
計画作りに追われて、子どもと向き合う時間がなくなっては本末転倒です。

視点③ 関係者が簡易に確認・共有・改善できる
不登校の子どもを支えるのは、担任の先生だけではありません。

  • 在籍校(担任・管理職)

  • 校内教育支援センター支援員

  • 校外教育支援センター指導員

  • スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー

  • 保護者

これだけの人が関わるため、ICTプラットフォームの整備共通フォーマットの策定が検討されています。

視点④ 柔軟かつ容易に対応できる

  • 年度途中からの開始・終了

  • 授業時数・内容の調整

  • 午後からの登校

  • 原籍学級への復帰希望

状況に応じて柔軟に対応できる仕組みが求められています。

視点⑤ 頑張りを積極的に評価できる仕組み
下学年の学び直し、ソーシャルスキルトレーニング、探究活動など、従来の評価体系になじまない活動も、きちんと評価できる仕組みを作る。
そして、それを高校入試にもつなげていく
評価と入試は、セットで検討が必要です。


先行事例:東京都「チャレンジクラス」

会合では、先行事例として東京都の「チャレンジクラス」が報告されました。
チャレンジクラスとは
通常の公立中学校の中に、不登校の生徒のための教室を設置する取り組みです。
学びの多様化学校と同等の教育課程を、既存の学校内で実施できます。

解説スライド:先行事例|東京都「チャレンジクラス」

設置状況

  • 2024年度:10校

  • 2025年度:14校(約230名が在籍)

最大の特徴:授業時数の大幅削減
標準チャレンジクラス年間授業時数1,015時間665時間削減率-約35%削減
登校時間も遅く、下校も早い。
ゆとりある時間割で、子どもたちの負担を減らしています。
柔軟なカリキュラム

  • 学年を超えた習熟度別の学び直し

  • プログラミング、アート、探究活動など特色ある教科

  • 教室に来られない日はオンラインで授業参加

成果
出席状況が改善した生徒:67.1%
「学習ができるようになった」と実感:79.5%
約8割の生徒が、学習への手応えを感じています。
核となるツール「学びのシート」
指導計画と学習計画を一本化したツールです。

  • 生徒自身が学習目標を設定

  • 教員と協働で作成

  • 単元ごとの短いサイクルで見直し

小さな成功体験を積み重ねていく仕組みになっています。

解説スライド:チャレンジクラスの成果/出席状況の顕著な改善

委員からの主な意見

専門家の委員から、重要な意見が出されました。
黒沢正明委員(主査代理/豊島区教育センター)

「不登校の子どもたちの多くは、当初は大きな目標を立てられない。まずは『朝起きる』『学校に来る』といった小さなステップを掲げ、肯定的に振り返ることで、次への意欲を醸成していくプロセスが欠かせない」

スモールステップの重要性を、現場の経験から指摘されています。
藤田修史委員(東京都教育庁)

「計画作成が目的化し、現場の過度な負担となることは避けなければならない」

現場の負担軽減と、緩やかな評価の選択肢の必要性を提言されています。
貞広斎子委員(千葉大学副学長)

「細くてもつながり続けることに責任を持つ戦略」

この言葉が、本制度の本質を表しています。
包摂性を最優先しつつ、質保障も維持する。
公教育の再定義につながる取り組みです。


解説スライド:委員からの主な意見/1児童生徒本人の関与を重視

制度運用上の課題

課題も明確になっています。

課題① 目標設定の難しさ
学習目標を立てることが難しく、「朝起きる」「学校に来る」といった生活面の目標から始めるケースも多い。
スモールステップで対応

課題② 情報共有の負担
メールだけでの情報共有は、確認作業自体が負担になる。
ICTプラットフォームの整備

課題③ 評価の壁
下学年の内容を学習しても低評定になりがち。
評価方法の抜本的見直し

解説スライド:制度運用上の3つの課題/情報共有の負担

課題④ 高校入試の地域間格差
都道府県によって対応が異なる。
全国的なガイドラインの整備


解説スライド:高校入試|都道府県の対応例/静岡県の柔軟な評価基準

今後のスケジュール

解説スライド:今後のスケジュール/2027年4月/2026年後半

まとめ:第4回会合の5つのポイント

❶ 個別の指導計画が制度の「核」 5つの検討視点が示されました。
❷ 児童生徒本人の関与を重視 自己肯定感・学習意欲の回復プロセスとして機能させることが目指されています。
❸ 現場の負担軽減が大前提 簡素で柔軟な計画設計が求められています。
❹ 先行事例から学ぶ 東京都チャレンジクラスでは、出席改善67.1%という成果が出ています。
❺「細くてもつながり続ける」公教育へ 包摂性を最優先しつつ、質保障も維持する新たな枠組みの構築が進んでいます。


解説スライド:|●多様な学びの場の柔軟な組み合わせ→校内外の学習環境やにTを活用し、一人ひとりに合わせた教育康経を編成

おわりに

不登校35万人という数字の向こう側には、一人ひとりの子どもがいます。
その子どもたちに、学びの機会を届けるための制度づくりが、今まさに進んでいます。
「細くてもつながり続ける」
この言葉が示すように、たとえ従来の学校の形に合わなくても、公教育の中でつながり続けられる仕組みが求められています。
今後のWGの動向にも注目していきたいと思います。


参考資料




この記事は塾にどう効くか

個別指導塾には直接の需要として関わります。支援が届いていない子が38.8%、約13万4千人います。学校にも支援機関にもつながれていない家庭が、塾を頼る場面は確実にあります。

受け入れる準備があるかどうかを、いま決めておく価値があります。

保護者への説明材料になるか

使い方に注意が要るテーマです。不登校の当事者家庭にとっては切実な問題なので、数字を前面に出した発信は避けたほうがいいと思います。

面談で効くのは統計より姿勢です。「昼間の時間帯でも受け入れられます」「まず週1回から始められます」といった、自塾で実際にできることを具体的に言えるかどうかがすべてです。

指導・カリキュラムへの影響

受け入れ体制の話になります。学習の遅れの度合いは一人ずつ違うので、学年ではなく到達度から始める設計が要ります。時間帯の柔軟性、保護者との連絡頻度、進度の決め方を、あらかじめ決めておくと相談を受けたときに即答できます。

制度側では、不登校の子に向けた特別の教育課程の設計が進んでいます。学校・教育支援センター・フリースクールとの役割分担が整理されていくので、地域にどんな受け皿があるかを把握しておくと、塾だけで抱え込まずに済みます。

発信のネタとして使えるか

発信するなら、慎重さが要ります。集客の材料として扱うと、当事者には敏感に伝わります。

書くとしたら「不登校のお子さんの受け入れについて」というページを1枚つくり、受け入れ可能な時間帯・進め方・費用を淡々と書くのが最も誠実で、結果的に問い合わせにもつながります。煽る必要はありません。

塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します

制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。

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