2026年3月30日、文部科学省は中央教育審議会の総則・評価特別部会(第7回)において、次期学習指導要領に向けた学習評価の具体的な変更案を提示しました。
最大の注目ポイントは、これまで「ノート提出回数」「挙手の回数」など形式的な評価が問題視されてきた「学習態度(学びに向かう力)」の評価方法を抜本的に見直す方針が、より具体的な形で示されたことです。
本記事では、この学習評価改革の重要ポイントを詳しく解説します。
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そもそも今回の特別部会とは何か?
今回の会議は、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の初等中等教育分科会 教育課程部会に設置された「総則・評価特別部会」の第7回会合です。
この部会は、2030年度以降に順次実施される次期学習指導要領の総則(教育課程全体の基本方針)と、学習評価の在り方を専門的に議論する場です。2025年9月の第1回から回を重ね、今回が第7回。テーマは「検討資料⑧ 学習評価の在り方について」で、石井英真委員(京都大学大学院准教授)からの提出資料も含め、評価制度の具体的な設計に踏み込んだ議論が行われました。
現行の学習評価の仕組み──3観点と評定の関係
まず、現在の仕組みを確認しておきましょう。
現行の学習指導要領(小学校2020年度、中学校2021年度実施)では、各教科の成績は以下の3つの観点で評価されています。
知識・技能:基礎的な知識や技術を習得し、活用できるか
思考・判断・表現:習得した知識を使って考え、判断し、表現できるか
主体的に学習に取り組む態度:意欲、粘り強さ、自ら学ぶ姿勢
これら3つの観点をそれぞれA・B・Cの3段階で評価し、それを総合して「評定」(小学校は3段階、中学・高校は5段階)を決定しています。
つまり、通知表の「5・4・3・2・1」という数字は、この3つの観点の組み合わせから導き出されるものです。
何が問題だったのか?──「学習態度」の形式的評価
問題は3つ目の観点「主体的に学習に取り組む態度」にありました。
本来、この観点は子どもたちが「粘り強く取り組み、自らの学習を調整しようとしているか」を見るものです。しかし現場では、ノートの提出回数、授業中の挙手回数、課題プリントの丁寧さなど、形式的・表面的な行動で評価されがちだという指摘が以前からありました。
こうした評価は、子どもの本質的な学びへの姿勢を捉えきれないだけでなく、「とりあえず手を挙げておけば成績に反映される」といった歪んだ学習行動を生む原因にもなっていました。
2025年7月の方針──「態度は評定に入れない」
こうした問題を受け、2025年7月に開催された特別部会では、「主体的に学習に取り組む態度」を評定に直接反映させず、所見欄での記述評価に移行する方向性が示されていました。
つまり、通知表の「5」や「4」といった数字は「知識・技能」と「思考・判断・表現」の2観点で決め、学習態度は別途文章で伝えるという考え方です。
しかし、この方針に対しては「態度を全く評定に反映しないのは行き過ぎではないか」「学びの姿勢も成績に含めるべきだ」という意見が委員の間で割れていました。
今回の新提案──「見取る姿」(仮称)の導入
そして今回、文科省が示した新たな案が「見取る姿」(仮称)というコンセプトです。
具体的な仕組みは以下のとおりです。
① 国が「見取る姿」の視点を教科ごとに提示する
各教科で「学びに向かう力」として見るべき姿を、国が具体的に示します。例えば中学校数学では「他者と数学的論拠に基づいて協働し、問題解決を進めようとしている」といった姿が想定されています。
② 1年間など長期での個人の伸びを評価する
従来のように学期ごと・単元ごとの短期評価ではなく、1年間を通じて継続的にその姿が見られるかどうかを評価します。これは「瞬間の態度」ではなく「長期的な成長プロセス」を重視する考え方です。
③ 「○」を付ける方式
「見取る姿」が1年間を通じて継続して見られた場合に「○」を付けます。3段階のABCではなく、「○がつくか、つかないか」というシンプルな形式です。
④ 評定に間接的に反映
「○」が付いた場合、「思考・判断・表現」の評価に加味され、結果として評定にも影響します。ただし、「○」が付けば自動的に評定が一つ上がるわけではなく、あくまで総合的な判断を前提とします。
教育関係者が注目すべき5つのポイント
ポイント1:「態度の形式的評価」からの脱却
ノート提出や挙手回数ではなく、教科の本質に根ざした「学びへの姿勢」を見る方向に転換します。これは教師の評価力が問われる変革でもあります。
ポイント2:長期的な「個人の伸び」の重視
「今この瞬間」の態度ではなく「1年かけてどう成長したか」を見る評価は、子ども一人ひとりの発達段階や個性に寄り添うものです。
ポイント3:評定との関係は「間接的」
2025年7月の「評定から完全除外」案からは軌道修正され、間接的に評定に影響する仕組みになりました。完全除外への懸念に対するバランスの取れた着地点と言えます。
ポイント4:塾・学習塾への影響
内申点(調査書)に直結する中学校の評定の決まり方が変わるため、塾での指導方法や保護者への説明にも影響が出ます。特に高校入試を見据えた進路指導では、新制度の理解が不可欠です。
ポイント5:教科WGとの連動
「見取る姿」の具体的な内容は、各教科ワーキンググループでの検討と連動して決まります。教科ごとにどんな姿が設定されるかは、今後の議論を注視する必要があります。
今後のスケジュール
今回の提案はあくまで「検討資料」の段階であり、確定ではありません。今後は以下のスケジュールで議論が進む見込みです。
2026年度内:総則・評価特別部会での議論継続。各教科WGでの「見取る姿」の具体化
2027年頃:次期学習指導要領の答申取りまとめ(予定)
2028年頃:次期学習指導要領の告示(予定)
2030年度:小学校で全面実施(予定)
2031年度:中学校で全面実施(予定)
2032年度〜:高等学校で年次進行で実施(予定)
まとめ
今回の総則・評価特別部会で示された「見取る姿」(仮称)の導入案は、長年課題とされてきた「学習態度の形式的評価」を根本から見直す重要な一歩です。
ポイントを整理すると、「学びに向かう力」の評価は数値化せず「○」方式に、長期の個人の伸びを重視し、評定には間接的に反映するという三層構造になっています。
この変更が実現すれば、「ノートを丁寧に書いたから成績が上がる」「手を挙げたから態度がA」という旧来の評価文化は大きく変わることになります。
一方で、「見取る姿」を適切に評価するためには教師の観察力と判断力が一層求められます。教育現場の負担増にならないよう、具体的な運用方法の検討が今後の重要課題です。
教育関係者としては、引き続き特別部会や各教科WGの議論を注視し、早めに準備を進めておくことが肝要です。
参考資料:
この記事は塾にどう効くか
進路指導の前提が変わる可能性があります。態度の評価が「提出物や挙手の回数」から「長期的な個人の伸び」に移れば、これまでの内申対策のうち形式的な部分は効かなくなります。
ただし現時点では検討段階です。断定して指導方針を変えるのではなく、動きを追っておく段階と考えてください。
保護者への説明材料になるか
なります。内申点は保護者の関心がもっとも高いテーマのひとつで、しかも仕組みが分かりにくい領域です。3観点と評定の関係を整理して説明できる塾長は、それだけで頼りにされます。
注意したいのは、「提出物を出しても意味がなくなる」と単純化して伝えないことです。評定への反映が間接的になるという話であって、日々の学習の記録が不要になるわけではありません。
指導・カリキュラムへの影響
中期的には見直しが要ります。「提出物を確実に出させる」「授業で挙手させる」といった、形式面を整える指導の比重は下がります。かわりに、一定期間での伸びを本人と保護者に見せられるかが問われます。
塾側でできる準備としては、月ごとの到達度を記録して面談で提示する形をつくっておくことです。学校が長期の伸びを見る方向に動くなら、塾の記録もそこに合わせておくほうが会話がかみ合います。
発信のネタとして使えるか
使えます。「内申点」「通知表」は保護者の検索が多い語で、しかも制度が動いている最中なので、正確に書けば読まれます。
自塾の記事にするなら、制度解説だけで終わらせず「だからうちの塾では、こういう記録を残しています」まで書くと、そのまま塾の強みの説明になります。
塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します
制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。
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