2026年6月23日、文部科学省は中央教育審議会「教育課程部会 特別支援教育ワーキンググループ(第10回)」の配付資料を公表しました。

今回の中心資料は「特別支援教育WG取りまとめ(案)」です。

最初に大事なことを言うと、これはまだ正式決定ではありません。明日から学校制度が変わる、という話ではなく、次期学習指導要領等に向けた議論の方向性として読む必要があります。

ただし、内容はかなり重要です。

なぜなら、特別支援教育が「一部の子どもだけの別枠」ではなく、通常学級の授業づくり、合理的配慮、通級による指導、保護者対応、そして学習塾での見立てにも関わる話になってきているからです。

私のYouTubeチャンネル「Edu-NEWS」でも、このテーマについて解説しています。

本記事では、今回の文科省資料から見えるポイントを、学校・保護者・塾の現場目線で整理します。

今回の資料は「正式決定」ではなく「方向性」

解説スライド:方向性/2030年度以降を見据えた議論

今回扱うのは、2026年6月23日に公表された「教育課程部会 特別支援教育ワーキンググループ(第10回)」の配付資料です。

会議の議題は「取りまとめに向けた検討について」であり、中心資料も「資料1 特別支援教育WG取りまとめ(案)」です。

つまり、現時点では確定した制度変更ではありません。

ここを誤解すると、「合理的配慮がすぐ変わる」「通級で教科指導が正式に変わる」「通知表や内申がすぐ変わる」といった読み方になってしまいます。

今回見るべきなのは、確定事項ではなく、次期学習指導要領等に向けてどの方向に議論が進んでいるのかです。

そのうえで、学校現場や保護者、塾が見ておきたい論点は大きく5つあります。

  1. 通常学級を起点に特別支援教育を見る流れ

  2. 合理的配慮を学習指導要領等の総則に位置付ける可能性

  3. 通級による指導と教科の学びの関係

  4. 特別支援学級・通級の質の確保

  5. 保護者・学校・塾の対話と連携

ポイント1:特別支援教育は「特別な場所だけの話」ではない

解説スライド:話ではない/学びの場を連続的に見る/特別支援学校

今回の資料でまず重要なのは、通常学級を含めた学校全体で特別支援教育を考える方向性です。

特別支援教育というと、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室の話だと思われがちです。

もちろん、それらは重要です。

ただ、今回の取りまとめ案では、通常の学級にも様々な面で配慮が必要な子どもが在籍していることを前提にしています。

つまり、これからの特別支援教育は、「特別な支援が必要な子は別の場所で」という発想だけでは不十分だということです。

まず通常学級の授業づくり、学級づくり、教室環境、学習環境をどう整えるか。

そのうえで、必要に応じて通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった学びの場を検討する。

このように、通常学級、通級、特別支援学級、特別支援学校を分断せず、連続的に見ることが重要になってきています。

学校現場では、これはかなり実務的な話です。

たとえば、板書を写すのが苦手な子がいる。音読が難しい子がいる。発表に強い不安がある子がいる。集中が続きにくい子がいる。

これを単に「できない」と見るのではなく、どこに困難さがあるのか、その背景に何があるのかを見立てる必要があります。

ポイント2:合理的配慮は「甘やかし」ではない

解説スライド:総則に位置づける/本人・保護者との建設的対話

今回の資料で特に大きいのが、合理的配慮の扱いです。

取りまとめ案では、合理的配慮の提供について、各学校段階の学習指導要領等の総則に位置付けることが必要だと整理されています。

具体的には、本人・保護者からの意思の表明を踏まえ、本人・保護者との建設的対話による合意形成を通じて、過重な負担のない範囲で合理的配慮を提供する、という方向性です。

ここで誤解しやすいのが、「合理的配慮=何でも希望通りにすること」ではないという点です。

一方で、学校側が一方的に「それは無理です」と終わらせる話でもありません。

本人や保護者が何に困っているのか。学校として何ができるのか。授業や評価の公平性と、学びへの参加をどう両立するのか。

ここを建設的に話し合っていくことが求められます。

合理的配慮は、甘やかしではありません。

学びに参加するために必要な障壁をどう取り除くか、という話です。

保護者対応の現場では、ここが今後さらに重要になります。

塾の先生にとっても無関係ではありません。学校でどのような配慮を受けているのか、家庭では何に困っているのか、塾では何を調整すべきか。これを知らずに成績だけ見ると、見立てを間違えることがあります。

ポイント3:通級は補習ではない。ただし教科の学びと無関係でもない

解説スライド:補習ではない。/でも教科と無関係でもない

今回、保護者や学習塾が気になりやすいのが、通級による指導と教科の学びの関係です。

通級による指導は、通常の学級に在籍しながら、一部の時間で特別な指導を受ける仕組みです。

基本は、自立活動に相当する内容です。つまり、単に国語や算数の遅れを補習する場所ではありません。

ただし、今回の議論では、障害の状態等に応じたきめ細かな指導を実現するために、各教科について教育課程上の特例的な取扱いができないことなどが課題として示されています。

ここは誤解しやすいところです。

通級が補習塾になる、という話ではありません。

しかし、教科の学びと完全に切り離されているわけでもありません。

たとえば、読み書きに困難がある子に対して、国語の文章をただ繰り返し読ませるだけではなく、読みやすい提示方法、音声読み上げ、要点の整理、表現方法の選択肢を考える。

発表に強い不安がある子に対して、みんなの前で発表することだけをゴールにするのではなく、ICTを使って発表する、紙に書いて示す、少人数で練習するなど、参加の方法を増やす。

こうした支援は、教科の学びと密接に関係しています。

成績や内申の話はどう見るべきか

今回の特別支援教育WGの本体資料だけで、成績や内申がこう変わると断定することはできません。

今回の本筋は、成績や内申を直接変える話というより、合理的配慮や通級と教科の学びの関係を整理し、学校がどのように支援し、どのように学びを説明するかという話です。

一方で、同じ配付資料ページにある参考資料では、不登校児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループの骨子案も示されています。

そこでは、評定や指導要録、高校入試の調査書に関わる論点も出ています。たとえば、通常の教育課程とは異なる目標に基づいて評価する場合に、評定の後ろに「※」を付けるような案です。

ただし、これは今回の特別支援教育WG本体の中心論点ではありません。

したがって本記事では、関連論点として押さえるにとどめます。

ポイント4:制度よりも「支援の質」が問われる

今回の資料で、現場目線ではここが非常に重要です。

特別支援学級や通級による指導の在籍者・利用者が増える中で、制度を広げるだけでは不十分です。

担当する先生の専門性、校内体制、教材、ICT活用、保護者との合意形成が追いつかなければ、制度だけが増えて中身が追いつかないということが起こります。

資料では、教師から見える「困難さの状態」だけに対応するのではなく、その背景にある「困難さが生じる要因」に目を向けることが必要だとしています。

たとえば、授業中に集中できない子がいたとします。

それを「集中力がない」で終わらせるのか。

音が気になっているのか。

指示が長すぎて理解できないのか。

見通しが持てないのか。

書くことに時間がかかっているのか。

課題の難易度が合っていないのか。

見立てによって、支援はまったく変わります。

学校・保護者・塾が見るべきこと

解説スライド:見る視点が変わる/役割を分けて準備する

今回の資料を受けて、学校・保護者・塾が見るべきことを整理します。

まず学校の先生方は、通常学級の授業づくりを特別支援教育と切り離さないことです。

板書、発問、提出物、発表、ICT、座席、評価方法。こうした日々の授業設計が、特別支援教育の入り口になります。

次に保護者の方は、「何を配慮してほしいか」だけでなく、「子どもが何に困っているのか」「どんな方法なら学びに参加しやすいのか」を整理して、学校と対話することが大事です。

そして塾の先生方は、学校での支援と塾での学習支援をつなぐことです。

学校で合理的配慮を受けている子が、塾では一律のテスト、宿題、座席、声かけになっていると、力を発揮しにくいことがあります。

これからは、点数だけを見るのではなく、どんな学び方なら力を出せるのかを見ることがより重要になっていきます。

まとめ

今回の特別支援教育WG取りまとめ案は、専門的な資料ですが、現場への影響はかなり大きい内容です。

特に重要なのは、特別支援教育が「特別な場所の話」から「通常学級を含む学校全体の授業づくりの話」へ広がっていることです。

これは、きれいごとではありません。

むしろ、かなり実務的な話です。

誰が子どもの困難さを見立てるのか。

誰が保護者と話すのか。

どこまで配慮するのか。

評価はどう説明するのか。

塾や家庭とはどう連携するのか。

ここが問われます。

現時点では正式決定ではありませんが、次期学習指導要領に向けた議論として、学校・保護者・塾が早めに見ておきたいテーマだと思います。

参考資料

この記事は塾にどう効くか

配慮を求めることは特別扱いではない、という理解を塾側が持てているかが問われます。学校が配慮を広げる方向に動くなら、塾の運用がそれより遅れているのは不自然です。

制度の細部より、目の前の生徒に何を調整できるかを決めておくほうが実務的です。

保護者への説明材料になるか

なります。合理的配慮は「甘やかし」ではなく、同じ土俵に立つための調整だという説明が、この記事の中心です。保護者がその整理を持てると、学校への相談も進めやすくなります。

内申や成績への影響を心配される場面が多いので、そこは慎重に扱ってください。制度が動いている最中なので、断定は避けて「学校に確認しましょう」と促すのが安全です。

指導・カリキュラムへの影響

塾内でできる調整を具体化しておくと差がつきます。問題文の読み上げ、時間の延長、板書を写す負担の軽減、座席の位置。どれも設備投資なしでできます。

個別指導塾であれば、この領域はそのまま強みになります。学校の一斉授業では難しい調整が、塾ならすぐ試せるためです。

発信のネタとして使えるか

扱うなら丁寧さが要ります。当事者家庭にとってはデリケートな話題で、集客目的の記事だと伝わると逆効果です。

書くとしたら制度解説ではなく、「うちの塾でできる配慮」を淡々と列挙した1ページが最も役立ちます。探している保護者には確実に届きます。

塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します

制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。

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