2026年12月25日、「こども性暴力防止法」、いわゆる日本版DBSが施行されます。
学校や認可保育所などは法律上の義務対象です。一方、学習塾やスポーツクラブなどは、一定の要件を満たす事業者が申請し、こども家庭庁の認定を受ける仕組みです。
つまり、すべての学習塾に一律で犯罪事実確認が義務づけられるわけではありません。しかし、認定を目指す塾は、講師の確認だけでなく、研修、相談窓口、初動対応、情報管理まで一体で整える必要があります。認定を受けない、または要件上受けられない塾にも、自塾の安全対策を保護者へ説明するという課題が残ります。
この記事では、2026年9月8日時点のこども家庭庁資料をもとに、日本版DBSと学習塾の関係、認定対象となる基本要件、採用や教室運営への影響、施行前に塾長が準備したいことを整理します。
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日本版DBSはいつ始まり、学習塾も義務対象になるのか?
日本版DBSは2026年12月25日に施行されます。学校などは義務対象ですが、学習塾は一定要件を満たして申請し、認定を受けた場合に法律上の措置義務を負います。
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。一般には「こども性暴力防止法」「日本版DBS」と呼ばれています。
制度の目的は、犯罪事実の確認だけではありません。子どもへの性暴力を防ぐため、日常のルール、早期把握、相談、調査、保護・支援、研修、情報管理を組み合わせて運用することにあります。
こども家庭庁の制度ページでは、2026年9月2日更新の施行ガイドラインや、求人票、内定通知、就業規則、情報管理規程などのひな型が公開されています。施行前は資料が更新されるため、申請や社内整備の直前にも最新版を確認してください。
学校と学習塾の扱いはどう違う?
学校や認可保育所などは一律の義務対象です。学習塾やスポーツクラブなどは、要件を満たす事業者が申請する認定制度です。
| 区分 | 制度上の扱い | 表示できるマーク |
|---|---|---|
| 学校・認可保育所など | 法律に基づく義務対象 | 法定事業者マーク |
| 学習塾・スポーツクラブなど | 要件を満たし、申請・認定を受けた場合に義務対象 | 認定事業者マーク |
こども家庭庁の制度資料をもとに、2026年9月8日時点で整理。
学校などの義務対象事業者は、法律に基づく措置を実施し、法定事業者マークを表示できます。
学習塾などの民間教育保育等事業者は、国の認定を受けると、学校などと同水準の安全確保措置を行う義務を負い、認定事業者マークを表示できます。認定事業者名も公表されます。
ここで注意したいのは、「学習塾は対象外」でも、「すべての塾が一律に義務対象」でもないことです。認定の有無だけで安全性を断定することもできません。

学習塾が認定対象になる5つの基本要件は?
学習塾などが民間教育事業として認定対象になるには、期間、指導方法、場所、従事者数などの要件をすべて満たす必要があります。
- 児童等へ知識または技能を教える事業である
- 標準的な修業期間が6か月以上である
- 対面で指導を行う
- 子どもの自宅ではなく、事業者が選定・用意した場所で実施する
- 教える業務に従事する人が3人以上いる

「3人以上」は単純な正社員数ではありません。アルバイト、業務委託、派遣、ボランティアなども、実際の業務に応じて判断されます。複数教室がある場合は、原則として各教室ではなく事業全体で確認するとQ&Aに示されています。
オンライン専業の塾は対面要件を満たしません。教える人が3人未満の個人塾も、制度上の要件を満たさない可能性があります。これは安全性が低いという意味ではなく、認定制度の入口に要件があるということです。
学習塾が認定を受けるメリットは何か?
認定を受ける主な意味は、公式マークを表示できること、安全対策を標準化できること、保護者へ説明しやすくなることです。
認定事業者は、国の認定事業者マークをウェブサイトやパンフレットなどに表示できます。保護者にとっては、塾選びの際に安全管理の取組を確認する一つの材料になります。
もう一つの利点は、採用、研修、相談、初動対応、情報管理を、担当者の経験だけに頼らない仕組みにできることです。こども家庭庁のガイドラインとひな型を使えば、求人票や就業規則を含めて運用を見直せます。
ただし、認定マークは「問題が絶対に起きない」という保証ではありません。マークの取得だけを目的にせず、規程が日々の教室で実行されているかを確認する必要があります。
認定を受けた塾は、誰をいつ確認する?
講師は原則として対象です。雇用形態ではなく、子どもと接する実際の業務から判断し、新規の対象者は原則として業務開始前に確認します。
アルバイトや業務委託の講師も、契約名だけで対象外にはなりません。受付、清掃、警備などは、子どもに対する支配性、継続性、閉鎖性がある業務かを個別に判断します。
確認時期の基本は次のとおりです。
- 新たに対象業務へ就く人:原則として子どもに接する業務の開始前
- 認定時にすでに働いている対象者:認定後1年以内
- 確認後:原則5年ごとに再確認
急な欠員などで確認が間に合わない場合には例外がありますが、その間は子どもと1対1にしないなど、厳格な代替措置が必要です。
確認するのは「すべての犯罪歴」ではなく、法律が定める特定性犯罪の事実です。この情報は極めて機微性が高く、確認結果がなかったという情報を含め、閲覧者、保存、廃棄、漏えい時対応を決める必要があります。
犯罪事実確認をすれば、子どもの安全は守れる?
確認は安全対策の一部です。日常ルール、相談窓口、早期把握、初動対応、研修、情報管理を継続してこそ、子どもを守る仕組みになります。
犯罪事実が確認されなかった人による不適切な行為まで、過去の記録照会だけで防げるわけではありません。認定を受けた塾には、次のような取組も求められます。
- 不適切な行為を防ぐ服務規律と行動ルール
- 子どもの変化や被害のおそれを早期に把握する仕組み
- 子どもが担当講師以外へ相談できる窓口
- 疑いが生じた場合の初動、調査、保護・支援
- 従事者と情報管理責任者への研修
- 犯罪事実確認に関する機微情報の管理

担当者が変わっても同じ対応ができるよう、誰が判断し、誰に報告し、子どもをどう保護するかを規程と研修に落とし込むことが重要です。
1対1指導・個室・SNSでは何を見直す?
1対1を一律に禁止するのではなく、密室や私的な連絡を減らし、第三者の目と記録が入る運用を作ります。
学習塾には、子どもと大人の距離が近くなる場面が数多くあります。
- 個別指導ブース
- 完全個室での面談
- 閉館前後の自習対応
- 教室と駅や自宅の間の送迎
- 講師と生徒のSNSやメールでの直接連絡
必要な面談や相談までなくす必要はありません。やむを得ず1対1になる場合は責任者へ事前に伝える、個人アカウントを使わない、面談の時間と内容を記録する、別の大人へ相談できる経路を用意するといった運用が考えられます。
防犯カメラの設置が、すべての塾へ一律に法律で義務づけられるわけではありません。設備の有無だけでなく、死角、密室、私的連絡を減らすルールを、講師、子ども、保護者へ共有してください。
講師採用・労務・情報管理はどう変わる?
認定を目指す塾は、内定や配置決定から犯罪事実確認、研修、授業開始までの工程を分けて設計する必要があります。
確認前でも、子どもと接しない座学研修やオリエンテーションは可能です。採用後すぐに授業を任せるのではなく、確認と研修を終えてから対象業務へ配置する流れを作ります。
求人票、内定通知、雇用契約、就業規則には、犯罪事実確認、配置変更、情報の取扱いなどを反映します。犯罪事実が確認された場合でも、自動的に内定取消しや解雇ができるとは限りません。子どもと接しない配置が可能か、契約や就業規則はどうなっているかを踏まえ、労働法制に沿って判断する必要があります。個別の対応は、社労士や弁護士へ確認してください。
また、確認結果を教室長同士のチャットや通常の人事ファイルで広く共有することは避けなければなりません。誰が見られるか、どこへ保存するか、いつ廃棄するか、漏えい時に誰が対応するかまで決めます。
認定を受けない、または受けられない塾はどう説明する?
「未認定だから危険」ではありません。認定対象外となる理由と、自塾が実施する安全対策を具体的に説明することが重要です。
教える人が3人未満の小規模塾やオンライン専業塾など、取組の意思があっても制度上の認定要件を満たさない事業者があります。
保護者が認定の有無を比較するようになったとき、「対象外です」だけで終わると、安全対策をしていないように受け取られる可能性があります。次のような項目を、ウェブサイトや入塾説明で伝えられるようにしてください。
- 講師と生徒が1対1になる場合のルール
- 個人端末やSNSによる直接連絡の扱い
- 子どもと保護者の相談先
- 不適切な行為の疑いが生じた場合の対応
- 講師研修と責任者
認定を受けているかどうかだけでなく、子どもを守る仕組みが日常で動いているかを、分かる言葉で示すことが信頼につながります。
施行前に塾長がやるべき5つの準備は?
最初に認定対象かを確認し、対象者と危険場面を棚卸ししてから、規程、責任者、保護者への説明を整えます。
- 期間、対面、場所、人数から、自塾が認定対象になるか確認する
- アルバイトや受付を含め、子どもと接する可能性がある人を業務実態から洗い出す
- 1対1、個室、SNS、送迎など、危険が生じやすい場面を確認する
- 採用、研修、相談、初動対応、情報管理の規程と責任者を決める
- 保護者と子どもへ、相談先や連絡ルールを分かる言葉で説明する

一から独自に作る必要はありません。こども家庭庁は規程や求人票などのひな型を公開しています。全国学習塾協会も、従事者向けと情報管理責任者向けのWEB研修、理解度確認テスト、修了証発行システムを提供しています。
ただし、ひな型を保存しただけでは運用になりません。自塾の教室配置、講師数、採用方法、連絡手段に合わせ、実際に使える内容へ落とし込んでください。
まとめ:認定マークより、日々の運用を説明できるか
日本版DBSが始まっても、すべての学習塾が一律に犯罪事実確認の義務を負うわけではありません。学習塾は、一定の要件を満たした事業者が申請し、国の認定を受ける制度です。
認定を受ける場合は、講師の確認だけでなく、採用、研修、相談、初動対応、情報管理まで組織として整える必要があります。
認定を受ける塾も、制度上受けられない小規模塾も、子どもと大人が近い距離で関わる場面を見直し、担当講師以外へ相談できる経路を作ることは共通です。
保護者へ伝えるべきなのは、マークの有無だけではありません。子どもを守る日々のルールがどのように動いているかです。
参考資料
- こども家庭庁「こども性暴力防止法」制度ページ
- こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」令和8年9月改訂
- こども家庭庁「こども性暴力防止法について(概要)」
- こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」
- 全国学習塾協会「こども性暴力防止法(日本版DBS)施行に向けた支援について」
- 全国学習塾協会「日本版DBS対応 研修・修了証発行システム」
この記事は塾にどう効くか
最初に、自塾が認定対象となる基本要件を満たすかを確認してください。認定を申請する場合は、犯罪事実確認だけでなく、研修、相談、初動対応、情報管理を継続して運用する体制が必要です。
認定を受けない、または要件上受けられない塾も、1対1指導、個人端末での連絡、相談窓口など、自塾の安全ルールを保護者へ説明できる状態にする必要があります。
保護者への説明材料になるか
なります。学校は義務対象、学習塾は認定制度であることを最初に分けて伝え、その上で自塾が認定を目指すか、対象外ならどの安全対策を行うかを説明してください。
認定マークを『絶対安全の証明』として扱わず、講師と生徒が1対1になる場面、SNS連絡、相談窓口、問題発生時の対応を具体的に示すことが信頼につながります。
採用・教室運営への影響
教科内容が直接変わる制度ではありませんが、採用から授業開始までの流れは変わります。認定事業者は、対象者の確認と研修を済ませてから、子どもに接する業務へ配置できるよう工程を分けてください。
教室では、個別指導、面談、自習、送迎、SNS連絡を棚卸しし、第三者の目と記録が入る運用にします。就業規則や情報管理は、必要に応じて社労士・弁護士へ確認してください。
発信のネタとして使えるか
使えます。『認定を取っています』だけでなく、『1対1指導時のルール』『講師の個人SNSを使わない』『子どもと保護者の相談先』など、自塾で実施している内容をウェブサイトやLINEで伝えてください。
未認定塾を危険と決めつけたり、『全塾に犯罪歴確認が義務化』と書いたりしないことが重要です。制度上の位置づけと、自塾の具体的な取組を分けて発信してください。
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