2026年3月9日、文部科学省の中央教育審議会 教育課程部会「情報・技術ワーキンググループ(WG)」の第7回会合が開催されました。全115ページに及ぶ【資料1】と全38ページの【資料2】で、中学校「情報・技術科(仮称)」の個別の内容項目がほぼ全貌を現し、デジタル学習基盤を前提とした学びの具体的方策も初めて体系的に示されました。

本記事では、この第7回WGの配布資料を読み解き、教育関係者にとって重要なポイントを詳しく解説します。

Youtubeチャンネルでは動画解説も行っておりますので、こちらも合わせて御覧ください。

第1回〜第6回の振り返り──ここまで何が決まったのか

第7回の中身に入る前に、これまでの議論の流れを押さえておきましょう。このWGは2024年12月の中教審への諮問(「情報活用能力の抜本的向上」が主要テーマ)と、2025年9月の教育課程企画特別部会による論点整理(小学校の「情報の領域」付加、中学校の「情報・技術科」新設、高校「情報科」充実の方向性)を受けて設置されました。主査は堀田龍也先生(東京学芸大学教職大学院教授・学長特別補佐)です。

第1段階:枠組みづくり(第1回〜第3回)

第1回(2025年9月)では、情報活用能力を「①活用」「②適切な取扱い」「③特性の理解」の3要素で整理する枠組みが提示されました。小学校から高校までの情報活用能力を体系化する全体の見取り図を描いた回です。各学校段階で現在指導されている内容を移動することも視野に入れて検討するとされました。

第2回(2025年10月)では、小学校段階の情報教育について議論。低学年からの情報活用能力の向上が検討テーマとなりました。

第3回(2025年11月)は、「生活、総合的な学習・探究の時間WG」との合同会議です。小学校の総合に付加される「情報の領域(仮称)」の具体的な姿が議論されました。現行の総合的な学習の時間を「探究」と「情報」に分け、情報の領域でミニ探究ユニットを通じて情報活用能力を育成する方向性が示されています。

第2段階:教科の骨格づくり(第4回〜第5回)

第4回(2025年12月)で、中学校「情報・技術科」と高校「情報科」の目標と見方・考え方の検討が始まりました。2040年の社会を想定した際に子供たちに求められる素養として「新たな知や価値を生み出す力」「デジタル技術を活用して生産性向上を図る力」「デジタル時代の民主主義を担う力」「主体的に学び続ける力」の4つが示されています。また、「情報技術(仮称)」と「情報を基盤とした生産技術(仮称)」の2領域構成が提案されました。

第5回(2026年1月)では、目標・内容の構造化と「高次の資質・能力」の検討が本格化。学習指導要領を「表形式」で整理することで教師にとって使いやすくする工夫が議論されました。中学校の内容項目として「(1)計測・制御のプログラミングとシステム化」「(2)コンテンツとデータ」「(3)情報技術の発展と社会」の3項目構成や、高次の資質・能力の暫定的なイメージが初めて示されています。

第3段階:AI教育の位置づけ(第6回)

第6回(2026年2月)は、AI教育の枠組みが一つの資料に体系的に整理された重要な回でした。「AI自体を学ぶ」と「AIを活用して学ぶ」の2軸で整理し、小学校では「②適切な取扱い」「③特性の理解」を先に学んでから「①活用」へ、中学校では「③特性の理解」を一層重視する方向性が示されました。メディアリテラシーやクリティカル・シンキングの教育課程上の位置づけも整理され、AI教育の方向性について大筋で合意を得ています。

第7回の位置づけ

このように、枠組み→骨格→AI教育の位置づけ、とステップを踏んできた上で、第7回はいよいよ「個別の内容」という中身の具体化に入りました。全115ページの資料で学習内容レベルの詳細が示されたのは今回が初めてであり、議論のフェーズが明確に転換したターニングポイントです。

第7回WGの2つの議題

第7回は2時間の会合で、以下の2つの議題を扱いました。

議題1(約90分):中学校情報・技術科(仮称)及び高等学校情報科における個別の内容等について 議題2(約27分):デジタル学習基盤を前提とした「主体的・対話的で深い学び」を一層充実するための方策について

議題1-①:中学校「情報・技術科」の目標と見方・考え方──「シンプルさ」の追求

第14回教育課程企画特別部会での「冗長」との指摘を受け、見方・考え方の記述が大幅に簡潔化されました。

情報・技術科(仮称)の見方・考え方(修正後): 「生活や社会における問題を、技術的視点から正負の両面を含め多角的に捉え、包摂的で豊かな生活や社会の実現に向けて、情報技術及び生産技術を適切に活用したり、創造したりすること」

高校情報科の見方・考え方(修正後): 「事象を、情報とその結び付きの視点から正負両面を含め多角的に捉え、包摂的で豊かな生活や社会の実現に向けて、情報技術を適切に活用し、問題を発見・解決したり、新たな価値を創造したりすること」

「包摂的で豊かな」「正負の両面」「価値の創造」がキーワードです。

議題1-②:「情報技術(仮称)」領域──3つの内容項目の具体的中身

「1. 情報技術(仮称)」は以下の3つの内容項目で構成されます。それぞれに(ア)情報技術の原理と仕組み→(イ)情報技術による問題解決→(ウ)社会における情報技術の吟味と活用、という3段階の学習過程が設けられています。

(1) 計測・制御のプログラミングとシステム化(仮称)

高次の資質・能力:「情報技術により情報処理の手順を自動化することで、人の判断や活動を助け、利便性を高められることを理解する」

主な学習内容としては、情報の2進数での記録(★高校から移行)、IPアドレスによるやり取りの自動化、情報通信ネットワークの構成(★)、情報セキュリティの仕組み(★)、著作権を含む知的財産権(★)、センサ・コンピュータ・アクチュエータ・インターフェースで構成される計測・制御システム、変数やリストを利用したプログラム(★)、しきい値を用いた処理の決定、AIが情報処理の自動化に果たす役割、などが挙げられています。

(2) コンテンツとデータ(仮称)

高次の資質・能力:「情報やデータから新たな関係や意味を批判的に見いだしたり、利用者の立場で情報を吟味し設計したりすることで、分析結果や自分の考えを分かりやすく伝えられることを理解する」

メディアの特性(★)、情報通信ネットワークの基本的な仕組み(★)、情報デザイン、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング、AIの基本的な仕組み等が含まれます。

(3) 情報技術の発展と社会(仮称)

高次の資質・能力:「情報技術や多様な技術が組み合わさり情報システムが構築されることを捉え、情報技術を活用し、情報の信頼性や社会に与える影響に配慮しながら情報システムを評価・改善することで、包摂的で豊かな生活や社会につながることを理解する」

情報システムの考え方(★)、AIが情報システムで果たす役割、民主主義社会におけるメディアの役割と機能、ネット依存など心身を含むリスク評価(★)、DXと生活・社会・環境との関係など、新規性の高い内容が多数含まれます。

※「★」は高校情報科からの移行内容

議題1-③:「情報を基盤とした生産技術(仮称)」──生産技術のDX化

「2. 情報を基盤とした生産技術(仮称)」は以下の4つで構成されます。

(1) 材料と加工(仮称):3DCAD・3Dプリンタ等のデジタル加工機活用、木質材料の多様化(大阪万博の大屋根リングの事例が資料中に言及)、人間工学を踏まえた設計

(2) 生物育成(仮称):環境データ(気温、土壌水分量等)の計測・分析に基づく作物栽培、AIを利用したスマート農林水産

(3) エネルギー変換(仮称):電子機械・ロボットの製作、AIやセンサを利用したロボティクス、蓄電技術の進展によるエネルギー活用

(4) 総合実習(仮称):複数領域を横断した探究的な問題解決(次回以降検討)

全領域共通で「情報技術を活用した問題発見と課題設定」「AIを補助的な役割とした活用」「情報デザインの考えを生かした成果の発信」が基盤として組み込まれています。

議題1-④:高校情報科──情報Ⅰ・情報Ⅱの全容

情報Ⅰ(5項目):(1)情報の仕組みと社会との関わり、(2)情報デザインとデザイン思考、(3)データ分析とモデル化・シミュレーション、(4)アルゴリズムとシステム開発、(5)情報及び情報技術を活用した課題探究

情報Ⅱ(5項目):(1)社会課題とデータサイエンス、(2)コンテンツデザイン、(3)AI、(4)先端技術と情報システムデザイン、(5)創造的な課題発見・解決の実践

「AI」が情報Ⅱの独立した内容項目として設定されたことは注目に値します。

議題1-⑤:授業がイメージできる──具体的な学習活動例

資料1には、StuDX Style事例として多数の授業イメージが掲載されました。

  • 中1技術分野(飯能第一中):3DCAD(Tinkercad)で部品を設計し3Dプリンタで出力、試行錯誤を繰り返す

  • 中3技術分野(田原本中):MakeCode+OpenAI APIで生成AIと対話しながらデジタルガジェットをプログラミング

  • 高1情報Ⅰ(九段中等教育学校):グループでアプリケーション開発、生成AIでヒントを得てプログラムを実装、クラウドで統合・テスト

教師が「この教科で何をするのか」を具体的にイメージできる資料になっています。

議題2:自己調整学習とデジタル学習基盤の総則への位置づけ

「個に応じた学習過程の充実」──新設される総則の項目

総則・評価特別部会での検討を踏まえ、次期学習指導要領の総則に「個に応じた学習過程の充実」(仮称)という新項目を設ける方向性が示されました。現行の「個に応じた指導」を発展させ、教師主語だけでなく「学習者主語」の視点を加えています。

総則に盛り込む要素として、①趣旨の明確化、②児童生徒による自己調整、③教師による指導・学習環境構築、④デジタル学習基盤等の役割・活用、の4つが整理されています。

自己調整学習の3サイクル+3方略

認知心理学の研究知見に基づき、「予見(学習前)→遂行(学習中)→内省(学習後)」の3段階サイクルと、「動機づけ方略」「学習方略」「メタ認知的方略」の3方略が体系的に整理されました。さらに、分散学習・検索練習・交互配置・精緻化・具体化・二重符号化の6つの効果的な学習方略も示されています。

情報・技術科におけるデジタル学習基盤の2つの活用方策

① 学習過程を充実する手段としての活用:3DCADでの試行錯誤増加、生成AIとの対話による問題解決支援、クラウドでのプログラム共有と協働テスト

② 学習の対象としての活用:デジタル学習基盤を構成する情報技術の特性自体を学ぶ

教育関係者が注目すべきポイント

1. 高校情報科からの内容移行が大規模に進む──IPアドレス、ネットワーク構成、変数・リスト、セキュリティなどが中学校に。中学校の授業時数確保と教員研修が急務です。

2. 生成AIが授業の中核ツールに正式採用──MakeCode+OpenAI APIの事例が公式資料に掲載。環境整備と利用ガイドラインの策定が必要です。

3. 自己調整学習は全教科に波及する──総則への記載予定のため、「単元マップの共有」「ルーブリックの事前提示」「振り返りの蓄積」が全教科で標準化される可能性があります。

4. 塾・教育事業者にとっての新市場──AI連携アプリ設計、IoTシステム開発、3DCAD+3Dプリンタ等、新しいコース開発のテーマが豊富に示されました。

今後のスケジュール

  • 次回以降:「(4)総合実習(仮称)」の内容、「内容の取扱い」の検討

  • 2027年度:学習指導要領の改訂(告示)予定

  • 2030年度:小学校で全面実施予定(中学校・高校は順次実施)

まとめ

第7回情報・技術WGは、115ページの資料1と38ページの資料2で、2030年の教室の姿を極めて具体的に描き出しました。今後もWGの議論が進み次第、最新情報をお届けしていきます。


参考資料:

この記事は塾にどう効くか

当面の指導には影響しません。塾が技術科を教えることは通常ないためです。

ただし内申の9教科に含まれるので、教科の位置づけが変わることは把握しておく価値があります。情報分野の比重が上がれば、筆記で問われる内容も変わります。

保護者への説明材料になるか

面談で積極的に使う場面は少ないテーマです。

使うとすれば「これからの中学では情報の学びが増えます」という文脈です。プログラミング教室と迷っている家庭には参考になります。

指導・カリキュラムへの影響

現時点では変わりません。2030年度以降の話です。

情報系の指導を塾のメニューに入れるかを検討している場合は、中学でどこまで学校がやるのかを見極める材料になります。学校がカバーする範囲が広がるなら、塾は別の切り口が要ります。

発信のネタとして使えるか

優先度は低めです。保護者の関心はまだ高くありません。

扱うなら「これからの中学で情報はどこまで学ぶのか」という括りで、プログラミング教育の話とまとめるほうが読まれます。

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制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。

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