2026年10月27日、東洋経済オンラインに「『何校受けても受からない』関関同立ショック」という見出しの記事が出ました。関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学の一般入試で、この2年で志願者は約1割増えたのに、合格者は約1割減ったという内容です。
少子化で「大学全入時代」と言われているのに、なぜ難関私大はここまで入りにくくなっているのか。結論から言うと、カギは2つあります。1つは、国が私立大学に出す補助金のルール(収容定員の1.1倍)。もう1つは、関西ならではの「11月の公募推薦で滑り止め→2月に関関同立」という受験の流れです。
この記事では、文部科学省などの通知と河合塾のデータをもとに、仕組みを整理します。最後に、生徒や保護者から「何校受ければ大丈夫ですか?」と聞かれたときの答え方もまとめます。
この記事の内容は動画でも解説しています。「何校受けても受からない」関関同立ショック|少子化なのに、なぜ難関私大は合格者を絞るのか
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関関同立で何が起きたのか?
記事では、大阪を中心に大学受験の個別指導塾を運営する方が取材を受けています。その方の集計によると、関関同立の一般方式では次のように変わりました。
- 延べ志願者:約18.5万人 → 約20.4万人(+10.4%)
- 合格者:約5.8万人 → 約5.3万人(−9.2%)
- 倍率:3.2倍 → 3.9倍
倍率がおよそ4倍ということは、出願のうち4分の3は不合格ということです。とくに大きかったのが関西学院大学で、志願者が10%増えたのに、合格者は25%減ったとされています。
記事の注釈では、関西学院大学の入試説明会の資料(2026年6月14日)として、2026年度の一般選抜で5回受験して1つ以上合格した人の割合は54.4%という数字も紹介されています。裏を返すと、5回受けても1つも受からなかった人が半数近くいます。以前は「3回か4回受ければ、どこか1つは受かる」と言われていたのが、通用しなくなっているわけです。
なお、ここまでの関関同立の合計や関西学院大学の数字は、記事で取材を受けた塾の集計と記事の注釈によるものです。大学ごとの公表値ではありません。
関西だけの話ではない
河合塾の集計では、2026年度の私立大学の一般選抜は、全国で志願者が前年比110%、合格者は95%でした。首都圏でも、日東駒専などで合格者の減り幅が大きかったとされています。仕組みそのものは全国共通です。
少子化なのに、なぜ合格者を絞るのか?
人気があるなら、たくさん入れればいいのでは、と思うかもしれません。カギは、国が私立大学に出している「私立大学等経常費補助金」のルールです。
この補助金は、学生を定員より入れすぎると、減らされたり、まったく出なくなったりします。記事によると、関関同立クラスの大学では、この補助金が年に30億〜60億円にのぼります。とても無視できる金額ではありません。
ルールはここ10年で2回変わった
1回目は2016年度から2018年度にかけてです。その年の入学者が、入学定員の何倍かで厳しく見るようになりました。収容定員8,000人以上の大きな大学では、2018年度には1.1倍を超えると補助金が出なくなりました。このときも、合格者が大きく減って話題になりました。
2回目が、2022年11月に文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団が出した通知です。2023年度から、見るのは「その年の入学者」ではなく「収容定員」、つまり1年生から4年生までの在籍者の合計に変わりました。切り替えた直後は、大学全体で見るぶん少しゆるくなり、一時的に合格者が増えました。
ところが、その基準が段階的に厳しくなります。大規模大学では、不交付となる収容定員超過率が2023年度は1.3倍、2024年度は1.2倍、2025年度には1.1倍まで引き下げられました。
「4学年の合計で1.1倍」は何を意味するか
たとえば、ある大学の定員が1学年1000人だとします。4学年で4000人です。1.1倍までということは、4学年の合計で4400人までしか置けません。
基準が1.3倍だったころは、5200人まで大丈夫でした。だから、ある学年で多めに入れてしまっても、なんとかなりました。ところが1.1倍になると、その「多めに入れた学年」がまだ在籍している間は、そのぶん新入生を少なくしないと、合計が収まりません。
記事ではこれを、過去の学年で多めに入学させたぶんを「清算」しなければならなくなった、と表現しています。志願者がどれだけ増えても、合格者は増やせない。むしろ減らさざるを得ない、という状況です。
ルール自体には理由がある
通知には、このルールにした理由も書かれています。教員1人あたりの学生数など、教育の条件を守るため。そして、単年度で見ていたころは、追加合格などの調整で一部の受験生が不安定な立場に置かれる、という指摘もありました。定員管理そのものは、悪い制度ではありません。
なぜ志願者は増えているのか?
理由は2つあります。
1つ目は、人気の二極化です。数の上では大学全入でも、受験生は難関大や有名大に集中していて、それ以外の大学は人を集めにくくなっています。
2つ目は、共通テストです。共通テストが難しくなり、国公立を目指す人の負担が大きくなりました。河合塾の分析でも、2026年度は共通テストの難化を受けて、国公立の難関大で2次試験の志願者が減り、安全志向が強まったとされています。その結果、安全策として私立大学もあわせて受ける人や、国公立をあきらめて私立に絞る人が増えました。河合塾は「併願校数を増やしてリスクを分散する動きが強まった」と書いています。
つまり、受ける側は「数を増やして安全に」と動き、大学側は「定員を守るために合格者を絞る」と動いている。この2つがぶつかって、倍率が上がっています。
関西で起きている「2段階の玉突き」
では、なぜ関西でとくに深刻なのか。
関西には、11月に産近甲龍(京都産業大学・近畿大学・甲南大学・龍谷大学)などの公募推薦を受けて年内に滑り止めを確保し、そのうえで2月に関関同立の一般入試に挑む、という受験の流れがあります。記事は「全国でもまれな受験慣行」と書いています。
関関同立が難しくなると、年内に滑り止めを取りたい人が、産近甲龍の公募推薦に一気に集まります。産近甲龍の側も、定員を超えるのを避けるため、年内の段階から合格者を絞り始めました。記事の注釈では、龍谷大学の公募制推薦の実質倍率が、2024年度の4.8倍から2025年度は5.5倍、2026年度は6.4倍まで上がったという速報値が紹介されています(フリーステップ入試情報室の速報値で、大学の公表値と異なる場合があります)。
関関同立の絞り込みが、年内の公募推薦を通じて、その下の大学にも押し出されていく。これが記事の言う「2段階の玉突き」です。
11月の公募推薦で「ここは大丈夫だろう」と思っていた生徒が落ちて、慌てて出願を増やす。でも2月の一般も倍率が上がっている。年内と年明けの両方で、見通しが立てにくくなっています。
さらに、いまの高校3年生が受けている2027年度入試からは、公募制の総合型選抜・学校推薦型選抜で面接の実施が必須になりました(河合塾ニュースリリース、2026年7月7日)。年内入試の側の形も変わりつつあります。
「何校受ければ大丈夫?」と聞かれたら
最後に、生徒や保護者から「倍率が上がっているなら、もっとたくさん受けたほうがいいですか? 何校受ければ大丈夫ですか?」と聞かれたときの答え方を3つに整理します。
1. 「受ける数を増やすだけでは、安全にはなりません」
5回受けても全部不合格だった人が半数近くいる、という数字のとおり、同じくらいの難しさの大学を並べて受けても、全部の倍率が上がっていれば、リスクはあまり分散されません。記事でも、取材を受けた塾の方が、焦ってとにかく出願数を増やす「戦略のない併願」がいちばんいけない、と話しています。
2. 「去年の倍率や合格ラインで考えないでください」
今回の理由は、大学の人気が急に上がったというより、国のルールに合わせて大学が合格者の数そのものを調整していることです。在籍者の合計で見るルールなので、どれだけ絞るかは大学ごと、年ごとに変わります。去年の数字はあくまで参考にとどめ、最新の入試結果や塾・予備校の速報を見ながら、志望校の組み方を決めることが大事です。
3. 「年内の公募推薦も、滑り止めではなく本番として準備してください」
年内の入試も倍率が上がっています。「とりあえず押さえておく」つもりで受けると、そこで崩れてしまいます。記事では、11月の公募推薦を、本番の出題傾向に対して自分の勉強がどこまで通用するかを確かめる「前哨戦」と位置づけていました。受ける以上は、そこに向けて対策をすることです。
まとめ
- 関関同立の一般方式で、この2年に志願者は約1割増え、合格者は約1割減った(取材先の塾の集計)
- 全国の私立大学の一般選抜でも、2026年度は志願者110%、合格者95%(河合塾)
- 理由は国の補助金のルール。2023年度から1〜4年生の在籍者の合計で見るようになり、大規模大学では2025年度に1.1倍まで厳しくなった。過去に多めに入れたぶんを、新入生で調整しなければならない
- 関西では「11月の公募推薦で滑り止め」の流れがあるため、影響が年内と年明けの2段階で、下の大学にも広がっている
- 「何校受ければ大丈夫?」には、数を増やすだけでは安全にならない/去年の数字で考えない/年内入試も本番として、の3つで答える
「大学全入」という言葉と、受験生が感じている厳しさには、大きなずれがあります。そのずれを、仕組みから説明できるようにしておきたいところです。
参考資料
- 東洋経済オンライン「『何校受けても受からない』関関同立ショック、関西で“玉突き”が深刻な理由」(2026年10月27日)
- 文部科学省・日本私立学校振興・共済事業団「令和5年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱いについて(通知)」(2022年11月22日)
- 河合塾 Kei-Net Plus「2026入試結果総括 志願者増・合格者減で私大入試は厳しい環境に」
- 河合塾 ニュースリリース(2026年7月7日)
この記事は塾にどう効くか
大学受験を見ている塾にとっては、今年の併願の組み方に直接かかわる話です。合格者が減ったのは一時的な人気のせいではなく、補助金のルールに合わせた調整なので、来年以降も同じ前提で考える必要があります。
とくに関西では、11月の公募推薦が「滑り止め」として当てにしにくくなっています。年内入試を本番として準備させられるかどうかが分かれ目です。
保護者への説明材料になるか
なります。「少子化なのに、なぜ受からないの?」という保護者の疑問には、「国の補助金のルールで、大学は1〜4年生の合計を定員の1.1倍までに収める必要があり、過去に多めに入れた学年がいる間は新入生を絞るしかない」と説明できます。大学側の事情が分かると、「数を増やせば安心」という考えを落ち着いて見直してもらいやすくなります。
ただし、関関同立の合計や関西学院大学の数字は、記事で取材を受けた塾の集計と記事の注釈によるもので、大学の公表値ではありません。数字を示すときは出どころもあわせて伝えてください。
指導・カリキュラムへの影響
教える中身は変わりませんが、受験校の組み方と年内入試の準備は見直す価値があります。同じくらいの難しさの大学を並べるだけの併願は、倍率が全体で上がっているとリスクを分散しにくくなります。
公募推薦は、本番の出題傾向に対して今の力がどこまで通用するかを確かめる場として位置づけ、そこに向けた対策の時間を確保してください。2027年度入試からは公募制の総合型・学校推薦型で面接が必須になっているので、面接の準備もあわせて考えておく必要があります。去年の倍率や合格ラインではなく、最新の入試結果や速報を見て判断することも、生徒と保護者に伝えておきたいところです。
発信のネタとして使えるか
使えます。「少子化なのに大学に入りにくいのはなぜ?」は、高校生の保護者が気になっている問いです。補助金のルールを一つの図や例え(1学年1000人の大学なら4学年で4400人まで)で説明する記事は、塾の受験指導の考え方を伝える材料になります。
書くときは、「関関同立は受からない」とあおるのではなく、「だから当塾では併願をこう組み、年内入試をこう準備します」という方針を添えてください。数字は出どころ(記事の取材先の集計か、河合塾の全国データか)を分けて書くことが信頼につながります。
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