高校離れが止まらない──18都府県で志望減少、16都府県が過去最低に。
2026年2月15日、共同通信の集計によって衝撃的なデータが明らかになりました。今春卒業する中学3年生の進路志望調査で、20都府県中18都府県で全日制公立高校の志望が前年より減少し、そのうち16都府県が過去最低を記録したというのです。
背景にあるのは、2026年度(令和8年度)から大幅に拡充される高校授業料無償化制度。私立高校の授業料支援の所得制限が撤廃され、支給上限額も引き上げられることで、「経済的理由で公立を選ぶ」という従来の構図が急速に崩れ始めています。
本記事では、今回の調査結果の詳細と、無償化制度の仕組み、そして教育関係者が注目すべきポイントを解説します。
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高校授業料無償化制度──2025年度・2026年度の改正を整理する
まず、今回の「公立離れ」の背景にある制度改正を整理しておきましょう。
高校授業料の無償化は、2010年にスタートした「高等学校等就学支援金制度」が基盤です。段階的に拡充されてきましたが、2025年度〜2026年度にかけて大きな転換点を迎えています。
2025年度(令和7年度)の変更点: 従来の就学支援金制度では、年収約910万円以上の世帯は支給対象外でしたが、2025年度に「高校生等臨時支援金」が新たに創設され、年収約910万円以上の世帯にも基準額相当(年額11万8,800円)が支給されるようになりました(令和7年度限りの措置)。これにより、就学支援金と臨時支援金を合わせることで、実質的に世帯年収に関係なく、すべての高校生が基準額の支援を受けられる状態になりました。国公立高校の授業料は年額11万8,800円ですので、全世帯で公立高校の授業料は実質無償化されたことになります。
2026年度(令和8年度)の変更点: ここが今回の「公立離れ」の最大の要因です。就学支援金制度の所得制限が正式に撤廃され、私立高校の加算分についても所得制限がなくなります。さらに、支給上限額が39万6,000円→45万7,200円に引き上げられます。45万7,200円は私立高校の全国平均授業料を勘案した水準です。つまり、世帯年収に関係なく、私立高校の授業料もほぼ無償化される方向になります。
これまでは世帯年収約590万円未満でなければ私立高校の手厚い支援を受けられませんでしたが、この制限がなくなることで、中間所得層以上の家庭でも「私立高校という選択肢」が現実的になったのです。
なお、大阪府は国の制度に上乗せする独自制度を先行実施しており、支給上限は63万円(所得制限なし)と、全国で最も手厚い支援を行っています。
調査結果の詳細──20都府県中18都府県で公立志望が減少
今回の共同通信の集計は、27都府県が実施した中学3年生の進路志望調査を基にしています。このうち前年と数値が比較可能な20都府県を分析した結果、以下のことがわかりました。
公立高志望が減少した18都府県: 宮城、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川、山梨、長野、愛知、岐阜、三重、滋賀、京都、兵庫、岡山、佐賀、長崎、鹿児島
このうち、岐阜と佐賀を除く16都府県が過去最低を記録しました。
特に深刻な減少を見せているのが以下の地域です。
3ポイント台の減少:栃木、埼玉、滋賀、鹿児島
2ポイント台の減少:群馬、神奈川、京都、兵庫、岡山
埼玉は公立志望が60%を割り込み、京都は50%を下回りました
京都の「50%割れ」は象徴的です。公立高校を志望する中学生が半数を下回ったということは、もはや私立高校が「多数派」になりつつあることを意味します。
一方、私立高校の志望状況を調査した12府県では、徳島を除く11府県で私立志望が増加し、うち9府県で過去最高となりました。
公立志望が増加したのは青森と徳島の2県のみ。全国的に「公立から私立へ」という流れが明確になっています。
なぜ「公立離れ」が加速しているのか──3つの構造的要因
今回の調査結果が示す「公立離れ」の加速には、単なる制度変更以上の構造的要因があります。
①経済的障壁の消失 これまで私立高校を選ぶ上で最大のハードルだった「授業料の差」が、無償化によって大幅に縮小します。年収約590万円以上の中間所得層にとって、私立高校の授業料負担が大きく軽減される計算です。「公立でないと家計が厳しい」という制約がなくなれば、教育内容や環境で学校を選ぶ家庭が増えるのは自然な流れです。
②私立高校の「選ばれる理由」の多様化 近年、私立高校はICT環境の充実、探究学習プログラム、グローバル教育、きめ細かな進路指導など、独自の教育プログラムで差別化を図ってきました。施設・設備面でも公立高校との差は大きく、「同じ授業料なら私立を選びたい」と考える家庭が増えています。
③先行事例の影響 大阪府が独自の無償化制度を先行実施した結果、公立高校の入試倍率が過去最低水準に低下したことが広く報道されました。この「大阪モデル」が全国に波及し、制度改正を見越した進路選択が前倒しで進んでいるとみられます。
教育関係者が注目すべきポイント
今回の調査結果は、学校の先生にとっても塾の先生にとっても、見過ごせない変化を示しています。
公立高校の先生方へ: 公立高校の定員割れが広がれば、学校の統廃合が加速する可能性があります。すでに少子化で生徒数が減少している地方では、無償化による私立シフトが追い打ちとなるケースも想定されます。公立高校としての独自の魅力づくり──特色ある教育課程の編成、部活動や地域連携の強化──が一層重要になります。
塾経営者・塾講師の方々へ: 生徒の志望校選びのトレンドが変わります。従来は「公立第一志望、私立は滑り止め」という構図が一般的でしたが、今後は「最初から私立が第一志望」という生徒が増えるでしょう。これは塾のカリキュラム設計や進路指導にも影響します。私立高校の入試傾向や学校情報の把握がより重要になり、保護者への情報提供の質が問われます。
また、注意すべき点として、授業料が無償化されても、入学金・施設費・教材費・部活動費などは依然として自己負担です。文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によれば、高校の年間学習費総額は公立が約60万円に対し私立は約118万円と、約2倍の差があります。この点を踏まえた保護者への適切な情報提供が求められます。
今後のスケジュール
2026年4月:高校授業料無償化の所得制限完全撤廃、私立加算の上限額45万7,200円に引き上げ
2026年3月:各都道府県の公立高校入試(今回の志望調査が出願にどう反映されるか注目)
2027年以降:制度拡充の効果検証、公立高校の定員見直しの議論が本格化する見込み
まとめ
今回の共同通信の集計は、高校無償化の拡充が生徒の進路選択に直接的な影響を与え始めていることを示す重要なデータです。
ポイントを整理すると:
20都府県中18都府県で公立高志望が減少、16都府県が過去最低
京都は公立志望50%割れ、埼玉は60%割れという象徴的な数字
私立志望は11府県で増加、9府県が過去最高
2026年4月の無償化拡充で、この傾向はさらに加速する可能性が高い
「授業料が同じなら、教育内容で選ぶ」──この当たり前の選択ができるようになること自体は歓迎すべき変化です。しかし一方で、公立高校の存在意義や地域の教育インフラのあり方について、真剣に考える時期に来ているとも言えます。
今後も高校教育をめぐる動向を注視し、情報をお届けしていきます。
参考資料:
この記事は塾にどう効くか
全国規模の構造変化だと確認できます。18都府県で公立志望が減り、うち16都府県が過去最低。地域固有の事情では説明がつきません。
自分の地域がまだ動いていなくても、無償化の拡充が進めば同じ流れが来ると考えて準備できます。
保護者への説明材料になるか
使えます。「公立に行かせたいが、私立も考えたほうがいいのか」という迷いに、全国の動きを示して答えられます。
無償化の内容は年度と自治体で違うので、金額の話は必ず最新の条件を確認してから伝えてください。
指導・カリキュラムへの影響
併願戦略の見直しに直結します。公立の倍率が下がる一方、人気私立の競争は上がります。滑り止めの設計が従来どおりでは危うい局面があります。
私立の情報収集の比重を、意識的に上げる必要があります。
発信のネタとして使えるか
使えます。「私立無償化 高校選び」は保護者の関心が高いテーマです。
自塾で書くなら、全国の傾向を前置きにして、地元の公立・私立の状況に落とす構成が読まれます。
塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します
制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。
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