「寝屋川ショック」から1年──2026年大阪府立高入試で見えた公立高校の二極化

2026年2月、大阪府教育委員会が2026年度(令和8年度)の府立高校入試に向けた進路希望調査(2026年1月30日現在)を公表しました。全日制の希望率は55.29%と前年同時期の56.17%からさらに低下。一方で私立高校の専願率は33.13%と4年連続で上昇し、公立高校離れが一段と鮮明になっています。

一般選抜を行う全日制126校のうち、現時点で71校が定員を下回る状況です。昨年「寝屋川ショック」として大きな話題になった府立寝屋川高校は巻き返しを見せた一方、北摂の進学上位校・池田高校が新たに苦戦するなど、公立高校をめぐる"地殻変動"は続いています。

本記事では、この2026年度進路希望調査のポイントを詳しく解説します。

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2026年度進路希望調査の全体像

まず、全体の数字を確認しましょう。大阪府公立中学校長会のまとめによると、府内の中学校を2026年3月に卒業する見込みの生徒は6万5171人で、前年より173人減少しました。少子化の波が着実に受験者数にも及んでいます。

進路先について見ると、府立高校(全日制)を希望する生徒は3万6032人で、希望率は55.29%。前年同時期の56.17%から0.88ポイント低下しました。これに対し、私立高校を専願で希望する生徒は2万1589人、専願率は33.13%で前年の32.19%を0.94ポイント上回っています。この専願率の上昇は4年連続です。

つまり、中学生の3人に1人が私立高校の専願を選んでいるということです。大阪府では私立高校授業料の実質無償化が段階的に進められてきましたが、2026年度からは年収制限を撤廃した完全無償化に移行する予定であり、この政策が保護者の学校選びに大きな影響を与えていることが数字に表れています。

寝屋川高校の巻き返し──「寝屋川ショック」とは何だったのか

2025年度入試で最大の話題となったのが、旧2学区のトップクラス進学校・大阪府立寝屋川高校(偏差値68前後)の定員割れでした。360人の募集に対して338人しか志願せず、倍率は0.94倍。SNS上で「寝屋川ショック」として大きな衝撃が広がりました。

この「寝屋川ショック」が起きた背景には、複合的な要因がありました。

まず大きかったのが、定員増の影響です。寝屋川高校は2022年度に倍率1.47倍の高倍率を記録したことを受け、2024年度入試から定員を320人から360人に40人増やしました。2024年度は志願者397人で1.10倍を維持しましたが、2025年度もこの360人をそのまま据え置いた結果、志願者の減少と相まって定員割れに至りました。仮に定員が320人のままであれば、338人の志願者で定員割れは回避できていた計算になります。

さらに、入試問題の難易度変更も影響しました。同校は2024年度入試から国語と数学をB問題からC問題(発展的問題)に切り替えており、「寝屋川を受けるならC問題対策が必要」という負担感が、受験生を四條畷高校(同じくC問題を採用するより上位の文理学科)へのチャレンジ、あるいは3教科すべてB問題の牧野高校などへと分散させました。

加えて、私立高校の授業料無償化により「不合格でも併願の私立に進学すれば経済的負担は変わらない」という安心感が広がったことや、校舎建て替え時期が発表されたことも心理的な影響を与えたとされています。

そして2026年度。寝屋川高校は募集定員を320人に戻しました。その結果、第1志望者は363人、倍率1.13倍と見事に巻き返しています。

寝屋川高校の過去5年の推移をまとめると、以下のようになります。

  • 2022年度:定員320人、倍率1.47倍

  • 2023年度:定員320人、志願者413人、倍率1.29倍

  • 2024年度:定員360人(40人増)、志願者397人、倍率1.10倍

  • 2025年度:定員360人(据え置き)、志願者338人、倍率0.94倍(寝屋川ショック)

  • 2026年度:定員320人(元に戻す)、第1志望363人、倍率1.13倍(巻き返し)

このデータから明らかなのは、「寝屋川ショック」の最大の要因は私立無償化だけではなく、定員増を据え置いたという"供給過多"が大きかったということです。定員を戻した途端に倍率が回復している事実がそれを裏付けています。

池田高校の苦戦と北摂地域の構造変化

一方で、2026年度に新たに注目を集めているのが、旧1学区の進学上位校・大阪府立池田高校です。現時点の倍率は0.94倍と、昨年の寝屋川高校と同じ数字で苦戦しています。

池田高校が苦戦する背景として、地域の教育環境が指摘されています。北摂地域には茨木高校(文理学科、2.04倍)、豊中高校(文理学科)、春日丘高校(文理探究科、1.94倍)など上位校の選択肢が充実しています。加えて、魅力的な私立高校も多く存在する地域であり、「トップ校にチャレンジするか、手厚い私立に進学するか」という二択の中で、中間層の公立校が敬遠される構図が生まれているようです。

池田高校は最寄り駅から20分ほど歩くという立地面のハンデもあり、アクセスの良い私立校との競争で不利な状況にあるとの分析もあります。

トップ校は依然として「狭き門」──際立つ二極化

府立高校全体が苦戦する中でも、文理学科を設置するトップ10校は今年も高い倍率を維持しています。

  • 高津:1.66倍

  • 天王寺:1.34倍

  • 北野:1.33倍

  • 大手前:1.23倍

さらに、茨木(文理学科)は2.04倍、春日丘(文理探究科)は1.94倍と、2倍に迫る高倍率です。

これらのトップ校は倍率が高いだけでなく、東京大学・京都大学・大阪大学・神戸大学など難関大学への合格実績でも圧倒的な存在感を示しています。つまり、「トップ校に学力上位層が集中し、それ以外の公立校は定員割れ」という二極化がさらに進行しているのです。

教育関係者が注目すべきポイント

今回の進路希望調査から、教育関係者が押さえておくべきポイントは3つです。

第1に、私立専願率の「構造的上昇」です。 4年連続の上昇は、もはや一時的なトレンドではなく構造的な変化と捉えるべきです。2026年度からの完全無償化でこの流れがさらに加速する可能性が高く、公立高校の受験指導においては「なぜ公立を選ぶのか」を保護者に伝える説明力が求められます。

第2に、定員設定の重要性です。 寝屋川高校の事例は、たった40人の定員変更が倍率に大きく影響することを示しました。塾の進路指導においては、各校の定員変更情報をいち早くキャッチし、倍率予測に反映させることが不可欠です。

第3に、公立中間校の存在意義の問い直しです。 池田高校の苦戦は、「トップ校 or 私立」の二極化の中で公立の中間層(二番手校)がもっとも厳しい立場に置かれることを示唆しています。大阪府の府立学校条例では3年連続の定員割れで再編整備の対象になる可能性があり、今後の統廃合にも注意が必要です。

今後のスケジュール

2026年度の府立高校入試(全日制一般選抜)のスケジュールは以下の通りです。

  • 出願:2026年3月4日〜6日

  • 学力検査:2026年3月11日

  • 合格発表:2026年3月19日

今後、出願状況の発表によって最終的な倍率が確定します。現時点の進路希望調査はあくまで「希望」であり、実際の出願では数字が変動する可能性があります。特に、定員割れ付近の学校は出願期間中の動向に注目です。

まとめ

2026年度の大阪府立高校入試は、私立専願率が33%を超え、71校で定員割れの可能性があるという、公立高校にとって厳しい状況が続いています。寝屋川高校は定員を元に戻すことで倍率を回復させましたが、新たに池田高校が苦戦するなど、「公立離れ」の波は地域を変えながら広がっています。

トップ校と中間校の二極化、私立無償化の影響、そして少子化──こうした構造的な変化を踏まえ、学校現場でも塾でも、今後の入試動向を注視していく必要があります。

参考資料:

この記事は塾にどう効くか

面談の前提が変わります。私立無償化の影響で私立専願が4年連続で増え、府立の全日制希望率は55.29%まで下がりました。「公立が第一志望、私立は滑り止め」という組み立てが当たり前ではなくなっています。

一方でトップ校の倍率は下がっていません。緩んだのは中位以下で、上位は依然として狭き門です。二極化していると見るのが正確です。

保護者への説明材料になるか

そのまま使えます。この調査は毎年1月末時点の希望調査として公表される公的な数字なので、出典を示して話せます。とくに寝屋川高校の巻き返しと池田高校の苦戦は、地域の保護者にとって身近な話題です。

気をつけたいのは、希望調査は最終倍率ではないことです。ここから出願で動きます。「現時点の希望段階の数字」と明示して伝えてください。

指導・カリキュラムへの影響

志望校の組み立てに影響します。中位校を狙う生徒にとっては、以前より入りやすい状況が生まれています。逆にトップ校志望の生徒には、緩和のニュースが油断につながらないよう注意が要ります。

私立を第一志望に据える家庭が増えるぶん、私立の入試日程と併願パターンを塾側が把握しておく必要性も上がります。

発信のネタとして使えるか

大阪の塾なら、これは最優先の発信ネタです。「◯◯高校 倍率」「大阪 公立 定員割れ」といった検索は、時期になると確実に増えます。地域名と高校名を入れて書けば、近隣の保護者に届きます。

毎年更新される数字なので、一度書けば翌年以降も数字を差し替えて使い回せます。塾のブログの定番コンテンツにしやすいテーマです。

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