2026年8月3日、日本経済新聞に「SNS・動画の視聴時間、長いほど成績低く 中3半数が1日3時間以上」という記事が掲載されました。

もとになったのは、同日に文部科学省と国立教育政策研究所が公表した、令和8年度(2026年度)全国学力・学習状況調査の分析結果です。

調査では、中学3年生の49.1%が、平日にSNSや動画を1日3時間以上見ていると回答しました。さらに中3数学では、4時間以上見る層と30分未満の層の平均正答率に20.9ポイントの差がありました。

数字だけを見ると、「スマホを取り上げれば成績が上がるのでは」と考えたくなります。ただし、今回分かったのは利用時間と成績の間に関係が見られることであり、SNSや動画が成績低下の原因だと証明されたわけではありません。

この記事では、調査で分かったことと分からないことを整理し、家庭で無理なく始められる時間のルールを3つ紹介します。

動画で先に全体像を知りたい方はこちらをご覧ください。

中3の49.1%が、平日にSNS・動画3時間以上

全国学力・学習状況調査は、小学校6年生と中学校3年生を対象に行われました。今回の質問では、平日に1日どれくらいSNSや動画を見ているかを尋ねています。

対象はスマートフォンだけではありません。携帯電話、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビなども含みます。一方、学習に使う時間とゲームをする時間は除かれています。

SNSや動画を1日3時間以上見ると答えた割合は、次の通りでした。

平日にSNS・動画を1日3時間以上見る割合
対象3時間以上の割合
小学校6年生37.3%
中学校3年生49.1%

学習に使う時間とゲーム時間を除き、スマートフォン、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビなどでSNSや動画を見る時間を質問。

中学生では、ほぼ2人に1人です。

小6の37.3%、中3の49.1%が平日にSNS・動画を3時間以上利用

たとえば、帰宅後の夕方6時から夜11時までを考えてみます。その5時間のうち3時間をSNSや動画に使うと、食事、お風呂、宿題、家庭学習、家族との会話、翌日の準備を残り2時間で行うことになります。

ここで見るべきなのは、動画を見た時間だけではありません。その時間によって、睡眠や学習など、ほかの何が押し出されているかです。

中3数学では、4時間以上と30分未満で20.9ポイント差

文部科学省・国立教育政策研究所の資料では、小学校の国語・算数、中学校の国語・数学・英語のいずれでも、SNSや動画の視聴時間が長い層ほど、平均正答率やスコアが低い傾向が示されました。

中学3年生の数学を見ると、平均正答率は次のように変化しています。

SNS・動画の視聴時間別 中3数学の平均正答率
平日1日当たりの視聴時間平均正答率
4時間以上48.7%
3時間以上4時間未満55.5%
2時間以上3時間未満61.0%
1時間以上2時間未満65.9%
30分以上1時間未満68.9%
30分未満69.6%

出典:文部科学省・国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査の結果(概要)のポイント」

4時間以上の層と30分未満の層の差は、20.9ポイントです。

中3数学はSNS・動画4時間以上で48.7%、30分未満で69.6%

時間が長くなるほど段階的に正答率が低くなっているため、「SNSや動画の長時間利用と学力には何らかの関係がある」とは言えます。家庭でも学校でも塾でも、無視できない結果です。

「SNSを見ると成績が下がる」と断定はできない

一方で、この調査だけから「SNSや動画を長く見たから成績が下がった」とは言えません。

今回の分析は、同じ時点で利用時間と学力を比べたものです。考えられる関係は一つではありません。

  • SNSや動画の時間が長く、勉強時間が短くなっている
  • 睡眠不足や生活リズムの乱れが、利用時間と成績の両方に影響している
  • もともと家庭学習の習慣がなく、結果として視聴時間が長くなっている
  • 家庭環境や本人の状況など、別の要因が関係している
SNS・動画の利用時間と成績には相関があるが因果関係は不明

したがって、「スマホを取り上げれば成績が上がる」とも、「3時間を超えたら危険」とも断定できません。3時間は今回の回答区分の境目であり、安全と危険を分ける科学的な基準ではないからです。

また、過去調査との単純比較にも注意が必要です。2026年度は、質問の対象機器にパソコン、タブレット、ゲーム機、テレビなどが含まれており、2024年度とは条件が同じではありません。

デジタル機器そのものを悪者にしない

今回の一次資料には、もう一つ重要な結果があります。

SNSや動画の利用時間が長い児童生徒ほど成績が低い傾向がある一方、ICT機器を活用する自信がある児童生徒ほど、各教科の正答率やスコアが高い傾向も示されています。

つまり、スマートフォンやタブレットという機械そのものが悪いわけではありません。

短い動画を次々と受け身で見続ける使い方と、分からないことを調べ、文章やスライドを作り、自分の考えを伝える使い方は分けて考える必要があります。

家庭で考えたいのは、「デジタルを使うか、使わないか」という二択ではありません。目的を持って使えているか、生活に必要な時間を押し出していないかです。

家庭で決めたい3つのルール

では、保護者は何から始めればよいのでしょうか。

いきなり端末を取り上げたり、親だけで上限時間を決めたりする前に、次の3つを親子で確認してみてください。

家庭で決めたい見える化、守る時間、終了時刻の3つ

1.まず1週間、実際の時間を見える化する

最初の1週間は、減らすことより把握することを優先します。

スマートフォンのスクリーンタイムだけでなく、テレビやパソコンも含め、何時から何時まで、何を見ていたかを確認します。

まず1週間、スマホやテレビ、パソコンの利用時間を見える化

この段階で「3時間も見ているじゃないか」と責めると、子どもは正確に話さなくなります。「自分では何時間くらいだと思っていた?」と、一緒に事実を見ることが大切です。

2.上限より先に「守る時間」を決める

「動画は2時間まで」と決める前に、まず次の時間を置きます。

  • 寝る時刻
  • 宿題や家庭学習を始める時刻
  • 食事や家族との会話の時間
睡眠、学習、家族の時間を先に守る

生活に必要な時間を先に確保し、その残りを自由時間として考えます。同じ2時間の視聴でも、睡眠や学習が守られている場合と、夜更かしや宿題の先延ばしにつながっている場合では意味が違います。

3.終了時刻と夜の置き場所を決める

毎晩、親が「もうやめなさい」と言い、子どもが「あと5分」と答える状態は、親子の消耗につながります。

何時に終えるか、夜はどこで充電するか、休日はどうするかを、落ち着いている時間に話し合っておきます。

スマホの終了時刻、充電場所、休日のルールを決める

ルールは、親が監視するためではなく、毎日の交渉を減らすための仕組みです。一度で完成させようとせず、1週間試してから見直す形にすると続けやすくなります。

学校や塾に求められるのは、禁止より振り返り

学校や塾でも、デジタル機器を一律に遠ざけるだけでは十分ではありません。

学習用の検索、動画教材、生成AI、プレゼンテーション作成など、目的のあるICT活用は今後さらに増えていきます。必要なのは、使った時間だけを評価することではなく、何のために使い、何が残ったかを本人が説明できるようにすることです。

面談では「スマホを何時間使っていますか」だけでなく、寝る時刻、家庭学習を始める時刻、端末を置く場所まで聞くと、生活全体の課題が見えやすくなります。

まとめ:見るべきは「何時間」だけでなく「何が押し出されたか」

今回の全国学力・学習状況調査では、次のことが分かりました。

  • 中3の49.1%が平日にSNSや動画を3時間以上見ていた
  • 中3数学では4時間以上と30分未満で平均正答率に20.9ポイント差があった
  • 各教科で利用時間が長い層ほど成績が低い傾向が見られた
  • ただし、SNSや動画が成績低下の原因だと証明されたわけではない

大切なのは、3時間という数字だけで子どもを責めることではありません。SNSや動画によって、睡眠、学習、食事、家族との会話が押し出されていないかを見ることです。

まず1週間見える化し、守る時間を先に決め、終了時刻と置き場所を話し合う。禁止や罰よりも、家庭の時間を設計することから始めてみてください。

この調査について

調査対象
小学校6年生、中学校3年生
調査期間
2026年4月20日〜5月29日
調査内容
国語、算数・数学、英語(中学校のみ)の教科調査と、児童生徒・学校への質問調査
公表主体
文部科学省・国立教育政策研究所
留意事項
SNS・動画の利用時間と成績の相関を示す分析で、因果関係を証明したものではありません。2024年度とは質問に含む機器の範囲が異なるため、利用割合の単純比較はできません

参考資料


Edu-NEWS おだ

教育ニュースの「背景」と「学校・家庭・塾への影響」を、一次資料からわかりやすく解説しています。

YouTube:https://www.youtube.com/@Edu-NEWS-

X:https://x.com/oda_syuni_AI

この記事は塾にどう効くか

今回の調査はSNSや動画が成績低下の原因だと証明したものではありません。ただし、長時間利用によって睡眠や家庭学習が押し出されていないかを確認する必要はあります。

塾では没収や一律制限を勧める前に、利用の見える化、守る時間、終了時刻と置き場所の3点を保護者と共有するのが実務的です。

保護者への説明材料になるか

使えます。中3の49.1%、数学の20.9ポイント差という具体的な数値があるため、感覚論ではなく調査結果をもとに話せます。

同時に『相関はあるが因果は不明』と必ず添えてください。面談では利用時間だけでなく、就寝時刻、家庭学習の開始時刻、夜の充電場所まで聞くと、生活上の課題を見つけやすくなります。

指導・カリキュラムへの影響

教科カリキュラムを変える話ではありません。学習状況の聞き取りと、家庭学習を始めるまでの生活設計に関わります。

ICTを使うこと自体を否定せず、受け身の長時間視聴と、調べる・作る・説明するといった目的のある活用を分けて見ることが大切です。

発信のネタとして使えるか

使えます。『スマホ禁止』より『睡眠・学習・食事を先に守る時間設計』という切り口なら、自塾の指導方針を伝えられます。

発信時に『3時間を超えたら危険』『スマホで成績が下がる』とは断定せず、調査年度、対象学年、国立教育政策研究所の資料リンクを併記してください。

塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します

制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。

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