これから5〜10年のあいだに、総合型選抜で入る学生を「増やす」。そう答えた大学が26%、4校に1校ありました。「減らす」と答えた大学は、わずか1%です。朝日新聞と河合塾の共同調査の結果で、教育業界誌の月刊私塾界が2026年10月25日に紹介しました。
注目したいのは、調査の時期です。調査が行われたのは2026年6〜8月。文部科学省が、総合型選抜と学校推薦型選抜で「面接を必ず行う」というルールを出したあとでした。面接の手間が増えるのに、それでも増やす大学が4校に1校あるわけです。
この記事では、いま年内入試がどれくらいを占めているのかを文部科学省のデータで確かめ、面接必須のルールと合わせて、高校生活の何が変わるのかを整理します。最後に、保護者から「高1から何かしたほうがいいですか?」と聞かれたときの答え方もまとめます。
この記事の内容は動画でも解説しています。総合型選抜を「増やす」大学26%|面接必須でも広がる年内入試、高1から何が変わる?
関連する解説:大学受験の半分超が推薦・総合型(Edu-NEWS・8月)/「何校受けても受からない」関関同立ショック(Edu-NEWS・10月)
調査で分かったこと
朝日新聞と河合塾の共同調査は、2026年6〜8月に全国の775大学に聞き、573大学が回答しました。今後5〜10年の総合型選抜による入学者について、答えは次のとおりです。
- 増やす:26%
- 維持する:38%
- 未定:28%
- 減らす:1%
面接が必須になって、大学にとっては人も時間もかかるようになりました。それでも、総合型を減らそうという大学はほとんどありません。
設置者別に見ると、「増やす」は私立が28%、国立が23%、公立が19%でした。私立が一番多いのは想像どおりかもしれませんが、国立でも4校に1校近くが「増やす」と答えています。
また、学校推薦型選抜を「増やす」と答えた大学も18%ありました。
なお、ここでの数字は月刊私塾界の紹介によるものです。前年の調査と比べて増えたのか減ったのかは、記事からは分かりません。
いま、年内入試はどれくらい?
そもそも今、総合型選抜や学校推薦型選抜でどれくらいの学生が入っているのか。文部科学省「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(2025年11月26日公表)で、2025年春の入学者を見てみます。
| 選抜区分 | 国立 | 公立 | 私立 | 全体 |
|---|---|---|---|---|
| 総合型選抜 | 7.7% | 6.0% | 22.8% | 19.5% |
| 学校推薦型選抜 | 12.7% | 26.9% | 38.8% | 34.1% |
| 合計(年内入試) | 20.4% | 32.9% | 61.6% | 53.6% |
出典:文部科学省「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(2025年11月26日公表)。令和7年度から区分が整理し直されたため、前年との比較はできません。
私立大学では入学者の約6割が、総合型と推薦型を合わせた、いわゆる年内入試で入っています。大学全体でも53.6%と、半分を超えています。
私立の内訳は、推薦型が38.8%、総合型が22.8%です。年内入試というと総合型のイメージが強いかもしれませんが、私立では指定校推薦や公募推薦などの推薦型のほうが大きいんですね。
一方で、国立大学は20.4%、総合型だけだと7.7%です。国立は今も、大半の学生が一般選抜で入っています。
国立大学には「30%」の目標がある
国立大学協会は2015年の「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」で、推薦入試・AO入試・国際バカロレア入試などを「入学定員の30%」まで広げることを目標に掲げています。
目標は「入学定員」、文部科学省の数字は「入学者」なので単純には比べられませんが、いまの国立の20.4%は、まだその目標には届いていません。
そう考えると、国立の23%が「増やす」と答えているのも納得がいきます。私立はすでに6割、国立はこれから伸ばす余地がある。総合型が増えていくのは、私立だけの話ではないということです。
面接必須なのに、なぜ「増やす」のか?
ここで、今年のルールの変化を確認しておきます。
文部科学省は2026年5月27日の「令和9年度大学入学者選抜実施要項」で、いまの高校3年生が受けている2027年度入試から、総合型選抜と学校推薦型選抜で、志望する学問分野への意欲や適性などについて面接による評価を必ず行うことを決めました。総合型選抜では、本人が書く志望理由書や活動報告書なども、必ず評価に使います。
さらに、2026年9月2日に更新されたQ&Aでは、その面接について次のように示されています。
- 評価する人が直接評価する
- 受験生がその場でやりとりしながら答える
- 複数の評価者で見る体制にする
- AI面接や、紙に書かせるペーパーインタビューでは代わりにならない
つまり、総合型選抜を増やすということは、それだけ面接の人と時間を確保するということです。大学にとっては、決して楽な選択ではありません。
理由は記事からは分からない。ただ、ヒントはある
では、なぜそれでも増やすのか。この調査の記事からは、大学ごとの理由までは分かりません。
ただ、文部科学省がQ&Aで書いている面接の趣旨はヒントになります。総合型や推薦型の「本来の趣旨」に改めて立ち返り、多面的・総合的に、丁寧に時間をかけて評価する、というものです。
学力テストの点数だけでは見えない、その学問への意欲や、自分で調べて考えてきた経験。そういう学生を、時間をかけてでも選びたい。「増やす」と答えた大学は、面接の手間を払ってでも、そういう入り口を広げたいと考えている、と読むことができます。
逆に言えば、28%の「未定」には、手間と体制を見ながら決めたいという大学も含まれていそうです。ここは来年以降の動きを見ていく必要があります。
「増やす」は高校生活をどう変えるか
総合型選抜は出願が早い入試です。ルール上、出願は9月1日から、合否の発表は11月1日から。高校3年生の夏休みが明けたら、もう出願です。
評価に使われるのは、志望理由書、小論文、面接、探究活動、活動の実績など。しかも、何をどう評価するかは大学ごとに違います。
月刊私塾界は、この調査を紹介する中で、高校3年生になってからの短い期間の対策では難しいケースが多いと指摘しています。高1・高2の段階から探究活動や文章表現を積み上げて、一般選抜の勉強と両立させる。そういう年間の設計が必要になる、という見方です。
これは学校の先生にとって、思い当たる話ではないでしょうか。高3の夏に志望理由書を書こうとして「書くことがない」と手が止まる生徒。探究の授業でやったことを、自分の進路の言葉につなげられない生徒。
逆に言うと、高1・高2の探究の授業や日々の課題が、そのまま入試の材料になる時代になってきた、ということです。総合型選抜が増えるというのは、「入試の時期が早まる」だけの話ではありません。高校の3年間そのものが、評価の材料に近づいていくということです。
ただし、「増やす」はあくまで大学の今後の方針です。実際にどれだけ増えたかは、文部科学省が毎年出す実施状況のデータで確かめていくことになります。例年なら11月ごろに、2026年春の入学者の数字が公表されます。
「高1から何かしたほうがいい?」と聞かれたら
最後に、保護者からこう相談されたときの答え方を3つに整理します。
「総合型選抜が増えるって聞きました。うちの子はまだ高1なんですけど、今から何かしたほうがいいんですか?」
1. 「特別な実績を急いでつくるより、今の授業と探究を大事にしてください」
要項でいう面接は、志望する学問分野への意欲や適性を見るものです。立派な受賞歴があるかどうかより、自分が何に興味を持って、何を調べて、何を考えたのか。それを自分の言葉で話せるかどうかが問われます。その材料は、毎日の授業や探究の中にあります。
2. 「やったことを、短くてもいいので書き残しておいてください」
高3の夏に志望理由書や活動報告書を書こうとしたとき、2年前のことを思い出すのは大変です。探究で何を調べたか、何に引っかかったか。メモ1行でもいいので残しておく。これは総合型を受けなかったとしても、一般選抜の小論文や面接で生きてきます。
3. 「総合型が増えても、一般選抜の勉強をやめる理由にはしないでください」
国立大学は、今も大半が一般選抜で入っています。総合型は大学ごとに評価が違い、受ければ必ず受かる入試でもありません。年内の入試と年明けの一般選抜、どちらにも進める状態をつくっておくのが一番安心です。
まとめ
- 朝日新聞と河合塾の調査で、今後5〜10年に総合型選抜の入学者を「増やす」大学は26%、「減らす」は1%。国立でも23%が「増やす」
- 2025年春の入学者では、私立の61.6%、大学全体の53.6%が年内入試(総合型+学校推薦型)で入学している
- 国立は20.4%。国立大学協会は「入学定員の30%」を目標にしており、伸ばす余地がある
- 2027年度入試から、総合型・学校推薦型では面接が必須。AI面接やペーパーインタビューでは代われない。それでも大学は総合型の入り口を狭めていない
- 年内入試は例外ではなく、大学入試の入り口の一つの本流になりつつある。高校の3年間の過ごし方が、これまで以上に問われる
動画では、調査の数字と文部科学省の資料をスライドで並べながら解説しています。
参考資料
- 月刊私塾界「総合型選抜を『増やす』大学が26% 朝日新聞・河合塾調査」(2026年10月25日)
- 文部科学省「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」ほか
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項等に関するQ&A」(2026年9月2日更新)
- 国立大学協会「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」工程表(2015年)
この記事は塾にどう効くか
大学受験を見ている塾にとっては、高1・高2の生徒と保護者への声かけにかかわる話です。年内入試は私立ではすでに入学者の約6割を占め、面接必須になってもなお広がる方向にあります。
ただし「増やす」は大学の今後の方針で、実際に増えたかどうかは文部科学省の実施状況のデータ(例年11月ごろ公表)で確かめる必要があります。
保護者への説明材料になるか
なります。「高1から特別な実績をつくらないといけない?」と焦る保護者には、「面接で見られるのは、志望する分野への意欲や適性。立派な受賞歴より、今の授業や探究で何を調べ、何を考えたかを自分の言葉で話せるかどうかです」と説明できます。
あわせて、「やったことを1行でも書き残しておく」「総合型が増えても一般選抜の勉強はやめない」の2点を伝えると、焦りを具体的な行動に変えてもらいやすくなります。調査の数字は月刊私塾界の紹介によるもので、大学ごとの理由までは分からない点も添えてください。
指導・カリキュラムへの影響
教科の指導内容は変わりません。変わるのは、高1・高2の時間の使い方です。総合型選抜は高3の9月から出願が始まり、志望理由書・小論文・面接・探究活動などで評価されます。高3になってから書く材料を探しても間に合わないケースが多い、というのが業界誌の見方です。
塾で扱える範囲としては、探究や学校の課題で何をしたかを生徒が短く書き残す習慣づくりや、文章表現の練習があります。一方で、国立大学は今も大半が一般選抜で入っているので、教科の積み上げを手放さないことも同じくらい大切です。
発信のネタとして使えるか
使えます。「総合型選抜が増えるらしい。高1の今、何をすればいい?」は、高校生の保護者が気になっている問いです。文科省のデータ(私立61.6%・全体53.6%)と面接必須のルールを示しながら、「特別な実績より日々の積み上げ」と伝える記事は、塾の受験指導の考え方を示す材料になります。
書くときは、「総合型対策をしないと間に合わない」とあおるのではなく、「当塾では一般選抜の力を土台に、年内入試の準備をこう支えます」という方針を添えてください。調査の数字(朝日新聞・河合塾)と文部科学省のデータは、出どころを分けて書くことが信頼につながります。
塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します
制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。
無料でHP診断を受ける