「推薦入試や総合型選抜は、これから増えていく」。そう考えている生徒・保護者は多いのではないでしょうか。

ところが、京都大学と神戸大学では、2028年度入試に向けて一部の総合型選抜を終了・再編する動きが公表されました。

ただし、これを「難関国立大学で総合型選抜が次々に廃止されている」と一括りにすると、実態を見誤ります。大学の公式資料を読むと、特定方式の終了だけでなく、新しい総合型選抜や学校推薦型選抜の開始、一般選抜への募集人員の振り替えが同時に起きているからです。

▼動画では、変更対象と受験家庭の備えを詳しく解説しています。

総合型選抜は全国で縮小しているのか

今回確認できたのは、京大・神戸大の特定方式の見直しです。全国の難関国立大学が一斉に総合型選抜を減らしていると一般化できる一次資料は確認できません。

一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜の違い

神戸大学は、全学共通で実施してきた「志」特別選抜を2027年度入試で終了します。しかし、国際人間科学部とシステム情報学部では、新しい総合型選抜を2028年度入試から始めます。

京都大学は、理学部特色入試のうち「数理科学入試」を2028年度入試から募集停止します。京都大学の特色入試全体や、理学部の特色入試全体が廃止されるわけではありません。

つまり、起きているのは「推薦入試の時代が終わる」という単純な変化ではなく、大学が学部ごとに入試方式を作り直す動きです。

一般選抜・総合型選抜・学校推薦型選抜はどう違うのか

大学入試の主な選抜方式
方式主な特徴注意点
一般選抜共通テストや大学独自試験を中心に評価調査書・面接等を組み合わせる大学もある
総合型選抜本人が出願し、書類・面接・口頭試問等で総合評価活動実績だけでなく学力も見られる
学校推薦型選抜高校長の推薦に基づき、調査書等を中心に評価評定や校内選考などの条件確認が必要

総合型選抜と学校推薦型選抜は、まとめて「推薦」と呼ばれがちです。しかし、本人の意思で出願する総合型選抜と、高校長の推薦が必要な学校推薦型選抜では、出願の仕組みが異なります。

また、どちらも「学力を見ない入試」ではありません。文部科学省は、知識・技能、思考力・判断力・表現力等も適切に評価するよう求めています。「推薦だから勉強は不要」「活動実績が多ければ有利」という説明は、難関国立大学の受験指導では危険です。

神戸大学の「志」特別選抜はいつ終了するのか

2026年度中に実施される2027年度入試が最後です。募集停止は2028年度入試からで、「2027年度入試から廃止」ではありません。

神戸大学は2026年7月10日、2019年度入試から実施してきた「志」特別選抜を、2027年度入試をもって終了すると発表しました。

「志」特別選抜は、大学入学共通テストを課さず、書類審査、総合問題、模擬講義、面接、口頭試問、プレゼンテーション等を組み合わせ、年内に合否を決める総合型選抜です。

神戸大学の2028年度入試変更資料

募集人員はどこへ振り替えられるのか

神戸大学「志」特別選抜終了後の主な再編
学部・区分2028年度入試の扱い
文学部3名を一般選抜後期日程へ
法学部3名を一般選抜前期日程へ
国際人間科学部新しい総合型選抜10名を開始
システム情報学部新しい総合型選抜5名を開始
医学部保健学科看護学専攻一般選抜前期2名+新しい学校推薦型5名へ
農学部12名分を一般選抜前期・後期へ
海洋政策科学部15名分を一般選抜前期へ

出典:神戸大学「令和10年度(令和9年度実施)入学者選抜における入試方法等の変更」(2026年6月25日更新)

神戸大学の総合型選抜再編図

大学共通の「志」という方式は終わりますが、神戸大学が総合型選抜全体から撤退するわけではありません。新しい総合型選抜や学校推薦型選抜を始める学部もあります。

神戸大学は、大学共通の基準に加え、各学部・学科のアドミッション・ポリシーに基づいて、それぞれの分野で求める資質や能力をより丁寧に評価する重要性が増したと説明しています。見直しの核心は、大学共通の選抜から、学部が求める学生像に合わせた選抜へ移ることです。

京都大学で募集停止になるのはどの入試か

理学部特色入試のうち「数理科学入試」1区分です。2027年度入試では募集があり、2028年度入試から停止されます。

京都大学は2026年3月17日、理学部特色入試のうち「数理科学入試」を、2028年度入試から募集停止すると公表しました。

京都大学理学部特色入試の募集停止資料

京都大学理学部の2027年度特色入試には、数理科学、生物科学、化学、物理学・数学(女性募集枠)、宇宙・地球惑星科学(女性募集枠)の5区分があります。募集停止となるのは、このうち数理科学入試です。

京都大学理学部特色入試で募集停止となる範囲

京都大学によると、数理科学入試は2016年度入試から始まり、2025年度までに50名を受け入れました。しかし、導入から10年の継続的な分析で、目的としていた多様性の確保が難しくなったことが分かり、本来の役割を一定程度果たしたと判断したとしています。

これは総合型選抜そのものを否定する判断ではありません。一つの方式が「一般選抜では測りきれない能力を持つ多様な人材を選ぶ」という目的を、本当に達成できているかを検証した結果です。

なぜ、総合型選抜の廃止と新設が同時に起きるのか

大学は入試方式を導入した後も、アドミッション・ポリシーに合う学生を選べているか、一般選抜では見えにくい力を適切に評価できているか、入学後の学修や成長につながっているかを検証する必要があります。

報道では、丁寧な書類審査や面接を支える大学教員の負担も論点として挙げられています。ただし、神戸大学の公式発表は教員負担を終了理由として明示していません。大学が公式に説明した理由と、報道が示す背景分析は分けて読む必要があります。

文部科学省の令和7年度入学者選抜実施状況では、国立大学の総合型選抜による入学者は7,714人で、国立大学入学者の7.7%でした。一方、同資料には選抜区分の再整理等があり、前年度との単純比較はできないという注意書きがあります。この数字だけで「全国で急拡大している」「全国で縮小が始まった」と断定することはできません。

総合型選抜を狙う生徒に、塾は何を伝えるべきか

1.大学名ではなく、年度・学部・方式名まで確認する

「神戸大学に総合型がある」「京都大学に特色入試がある」という確認だけでは不十分です。同じ大学でも、学部や選抜区分によって、共通テストの有無、評定条件、出願要件、募集人員、試験内容は異なります。

高1の春、高2の春、高3の募集要項公開時の少なくとも3回は、大学の公式サイトで確認するとよいでしょう。

2.活動実績の数より、学力と一貫性を整える

資格、コンテスト、ボランティア、探究活動の実績を増やすことだけが総合型選抜対策ではありません。なぜそのテーマに関心を持ったのか、活動を通じて何を学んだのか、大学の学問へどうつなげたいのかを、自分の言葉で説明できる必要があります。

そのうえで、評定と基礎学力も必要です。難関国立大学の総合型選抜を考えるなら、英語・数学・国語・共通テスト対策を止めるべきではありません。

3.一般選抜と併走し、見直す時期を決める

総合型選抜と一般選抜を、早い段階で二者択一にしないことが大切です。総合型選抜にも、共通テスト、筆記試験、口頭試問等で学力を厳しく見る方式があります。一般選抜のための学習は、総合型選抜でも土台になります。

総合型選抜を狙う家庭の確認項目

塾では、受験年度、方式と募集人員、評価方法、一般選抜の科目、第二志望以降のルートを並べて確認しましょう。この5項目を受験生ごとに管理しておけば、制度変更があっても受験戦略全体が崩れにくくなります。

まとめ

  • 神戸大学の「志」特別選抜は2027年度入試が最後で、2028年度入試から終了する

  • 神戸大学では同時に、新しい総合型選抜や学校推薦型選抜も始まる

  • 京都大学で募集停止になるのは、理学部特色入試の「数理科学入試」1区分

  • 今回の動きを、難関国立大学全体の「総合型選抜廃止」と一般化するのは正確ではない

  • 生徒には、学力・評定・探究・志望理由を並行して積み上げ、一般選抜と併走するよう伝える

大切なのは「推薦か一般か」を早く決めることではなく、制度変更にも対応できる準備をすることです。大学名だけでなく、受験年度・学部・方式名まで確認し、一般選抜の学習を残したまま挑戦できる戦略を作りましょう。

参考資料

この記事は塾にどう効くか

入試制度の誤解を正し、生徒に「総合型一本」ではなく一般選抜と併走する戦略を示す材料になります。とくに現在の中学生・高校1年生には、受験年度まで方式が変わり得ることを前提にした指導が必要です。

保護者への説明材料になるか

なります。面談で最初に伝えるべきなのは、「難関国立大で推薦が一斉に廃止されるわけではない」という点です。そのうえで、神戸大学は全学共通方式をやめて学部別の選抜へ再編すること、京都大学は理学部の1区分だけが募集停止になることを説明すると、過度な不安を抑えられます。

指導・カリキュラムへの影響

総合型選抜を希望する生徒にも、一般選抜の学習を止めない指導が重要です。志望理由書や探究活動の支援だけを別立てにせず、評定、共通テスト、筆記試験、口頭試問の土台となる教科学習と一体で管理しましょう。

また、志望校管理表には大学名だけでなく「対象年度・学部・方式名・募集人員・共通テストの有無」を入れておくと、制度変更に気づきやすくなります。

発信のネタとして使えるか

使えます。「推薦廃止」という強い言葉だけを使うのではなく、「総合型選抜の廃止ラッシュではなく、入試再編」という結論までセットで発信するのがポイントです。

塾のブログやLINEでは、「総合型選抜を考える高1・高2が今確認する5項目」「総合型一本に絞る前に確認したいこと」といった、自塾の進路指導へつながる切り口にすると、保護者にとって実用的な記事になります。

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制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。

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