小学校で「通知表を廃止する」という動きが注目されています。
Xでは、「子どもを順位や記号で決めつけなくてよい」という支持の声がある一方、「苦手が見えなくなるのでは」「親は何を見ればいいのか」という不安も広がっています。
ただし、最初に押さえておきたいことがあります。
通知表の廃止は、子どもの評価をやめることではありません。
変えようとしているのは、学期末に記号や所見を一枚の紙で渡す「伝え方」です。
▼動画では、自治体の事例と廃止後の課題まで約10分で解説しています。

通知表と「指導要録」は別のもの
通知表と混同されやすいのが、学校に残る「指導要録」です。
通知表は、子どもや保護者へ学習状況を伝え、次の学びを支えるために学校が作る文書です。全国一律の様式ではなく、記載内容や配布頻度は学校側で工夫できます。
一方の指導要録は、学校が作成・保存する正式な記録です。小学校では観点別の学習状況や、3年生以上の評定、行動・総合所見などが記載されます。
つまり、なくなる可能性があるのは「通知表という形式」であって、学校による評価や記録そのものではありません。

なぜ低学年から見直すのか
岐阜県美濃市では、2025年度から小学1年生、2026年度から小学1・2年生で通知表を廃止しました。
背景にあるのは、低学年の子どもほど「◎や△がいくつあるか」「友達より多いか少ないか」に意識を向けやすい、という問題意識です。
本来伝えたいのは、できるようになったことや、次に伸ばすことです。ところが記号だけが強く残ると、「自分は勉強ができない子だ」というラベルに変わり、苦手意識を早い段階で固定してしまうおそれがあります。
もう一つは、数か月前のつまずきを学期末にまとめて返すことへの疑問です。日常の中で「この単元はできた」「ここは一緒に練習しよう」と具体的に返した方が、次の行動につながりやすいという考え方です。

先生の時間を、対話と早期支援へ戻せるか
通知表作成は、児童一人ひとりの学習や生活を慎重に言葉と記号へ落とす仕事で、教員にとって大きな負担でもあります。
掛川市では、低学年の通知表に代えて、ドリルやテストの結果を教科・単元別に見える化し、児童・保護者との三者面談につなげる構想が示されています。
たとえば「理科が苦手」という一言ではなく、「この分野は理解できているが、ここはもう一度取り組もう」と具体化するイメージです。
重要なのは、紙をなくして終わりにしないこと。減らした作成時間を、面談、日常の連絡、授業中の観察、支援が必要な子への早期フォローへ振り替えられるかが問われます。

廃止によって生まれる3つの課題
通知表廃止にはメリットだけでなく、見落としてはいけない課題があります。
1.保護者に子どもの状況が伝わりにくくなる
通知表は、学校での子どもの様子を定期的に把握する数少ない機会です。代替の情報提供が弱ければ、「以前より何も分からなくなった」という不信感につながります。
「なくす」のであれば、代わりに何を、いつ、どのように家庭へ返すのかを先に示す必要があります。
2.デジタル化で情報格差が広がる可能性がある
学習履歴をアプリで見せるだけでも十分ではありません。データを見る環境や、グラフを読み解く時間は家庭によって異なります。
点数やグラフに加えて、「家庭では何をすればよいか」まで教師が対話で補う設計が必要です。
3.評価が不透明に見えるおそれがある
通知表には、学校がどの観点で子どもを見ているかを示す役割もあります。廃止後も、何をどう見取り、どんな基準で説明するのかが明確でなければ、評価が教師の主観に見えてしまいます。

保護者・学校・塾はどう見るべきか
このニュースの本質は、「通知表を残すか、なくすか」という二択ではありません。
子どもが自分の成長を理解し、保護者が支援でき、教師が次の指導へつなげられる評価の仕組みを作れるか。 ここが本当の論点です。
通知表がある学校では、数字や記号だけで子どもを判定せず、次の学習の作戦に変える。通知表をなくす学校では、その役割を日常のフィードバックや面談で代替する。形式は違っても、目指すところは同じです。
前回の動画では、通知表の数字・所見・出欠を「夏休みに何をするか」へ変える見方を詳しく解説しています。すでに通知表を受け取っているご家庭は、こちらもあわせてご覧ください。
▼通知表の見方を完全解説|親が見るべき5つのポイント
まとめ
・通知表廃止は、評価や指導要録をなくす話ではない
・背景には、低学年の劣等感・序列化への配慮と、学期末一括評価の見直しがある
・教員の作業時間を、子ども・保護者との対話へ振り替えられる可能性がある
・一方で、家庭への情報共有、デジタル格差、評価の透明性を設計しなければ逆効果になる
大切なのは、通知表をなくすこと自体ではありません。評価を「子どもを判定するもの」から、「次の一歩を決める材料」へ変えられるかです。
今後は、廃止した学校でどのような代替フィードバックが行われ、子ども・保護者・教員にどんな変化が出たのかまで見ていく必要があります。
参考資料
・文部科学省:確かな学力 FAQ
・文部科学省:指導要録(参考様式)
・東海テレビ:美濃市の通知表廃止
https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20250509_40291
・FNN:掛川市の低学年通知表見直し
・茅ヶ崎市教育委員会:香川小学校の取り組み
https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/100/92.pdf
この記事は塾にどう効くか
指導内容への直接の影響はありません。効いてくるのは面談です。「通知表がなくなったら、うちの子の成績はどう分かるんですか」と聞かれたときに、正しく答えられるかどうかが差になります。
学校からの情報が減る地域では、塾が返す成績データの重みが相対的に増します。
保護者への説明材料になるか
なります。この話題は誤解が広がりやすく、「評価そのものがなくなる」と受け取っている保護者が少なくありません。実際には指導要録は従来どおり残り、変わるのは家庭への伝え方だけです。この一点を落ち着いて説明できるだけで、塾長は「制度を分かっている人」として見られます。
面談で使うなら、次の3点に絞れば足ります。評価はなくならないこと。学校が残す記録は変わらないこと。変わるのは、学期末に紙で渡す形をやめる学校が出てきたということ。
指導・カリキュラムへの影響
ありません。教える中身も進め方も変わりません。中学校の評定や高校入試の仕組みに手が入るわけでもないので、進路指導の前提も現状どおりです。
ただし、通知表を廃止した自治体の保護者にとっては、学校から返ってくる客観的な数値が減ります。塾のテスト結果や単元別の到達状況が、家庭が持つ数少ない指標になる可能性があります。返却物に「どの単元ができていて、どこをやり直すか」を書き添えているかどうかは、一度見直す価値があります。
発信のネタとして使えるか
使えます。とくに実施している自治体が近隣にある塾は、地域名を入れて書く価値があります。保護者は不安になったとき「◯◯市 通知表 廃止」で検索するので、そこに自塾の記事があれば見つけてもらえます。
切り口としては、制度の解説そのものより「通知表が変わっても、うちの塾ではこう見ています」という自塾の評価の出し方を書くほうが、読み手には響きます。
塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します
制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。
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