2026年度から、高校の授業料支援が所得制限なしで拡充されました。その最初の年、兵庫県では私立高校の専願者が増える一方、公立高校では定員未充足が広がっています。

この変化は兵庫県だけのものではありません。文部科学省の学校基本調査を2025年度と2026年度で比べると、全国の全日制高校1年生はほぼ横ばいでしたが、公立は1万8,220人減り、私立は1万7,834人増えていました。

ただし、この数字だけで「無償化によって1万8,000人が公立から私立へ移った」と断定することはできません。この記事では、実際に確認できる変化と、そこから考えられる背景を分けて整理します。

この内容を動画でも解説しています。
YouTubeで見る|高校無償化で私立人気、公立は苦境に

高校無償化の初年度、何が起きましたか?

全日制高校1年生の総数がほとんど変わらないなかで、公立と私立の構成比が約1.9ポイント動きました。

2025年度の全日制高校1年生は94万5,548人、2026年度は94万5,112人で、減少は436人です。一方、公立は60万3,162人から58万4,942人へ減り、私立は33万9,673人から35万7,507人へ増えました。

全国の全日制高校1年生(2025年度→2026年度)
区分2025年度2026年度前年差
総数945,548人945,112人-436人
公立603,162人584,942人-18,220人
私立339,673人357,507人+17,834人

出典:文部科学省「学校基本調査」令和7年度・令和8年度。全日制本科1年生、各年5月1日現在。令和8年度は速報値。

全国の高校1年生は総数436人減、公立1万8220人減、私立1万7834人増と示す図
高校1年生総数はほぼ横ばいですが、公立と私立の内訳は大きく動きました。

公立の構成比は63.79%から61.89%へ低下し、私立は35.92%から37.83%へ上昇しました。高校1年生全体の減少だけでは説明しにくい、公私の構成変化が起きたことが分かります。

兵庫県では私立と公立にどんな差が出ましたか?

兵庫県では、私立の専願者増と、公立の未充足拡大が同じ年度に起きました。

読売新聞が兵庫県私立中学高等学校連合会の集計として報じたところでは、2026年度入試で私立44校のうち39校で専願者が増えました。内部進学者を除く定員充足率も、前年度の79.8%から90.5%へ上がっています。

兵庫県の私立44校中39校で専願者が増えたことを示す図
専願は合格した学校への進学を前提とするため、私立第一志望の動きを見る材料になります。

専願は、合格したらその学校へ進学することを前提とする受験です。単なる併願校ではなく、最初から私立を第一志望にする家庭の増加を示す数字として注目されます。

一方、兵庫県教育委員会の実施結果では、公立全日制127校のうち62校・93学科が募集定員を満たしませんでした。欠員は前年度の1,241人から1,719人へ478人増え、受検者は2万461人で前年度より1,072人減っています。

県内有数の進学校である長田高校は、募集定員280人に対して第一志望者が277人でした。ただし、兵庫県の複数志願選抜では第二志望者も含めて選抜され、最終的な合格者数は定員を満たしています。「長田高校も定員割れした」と表現するのは正確ではありません。

兵庫県だけの現象ですか?

兵庫県だけではありません。全国の在籍者データでも、公立減・私立増という同じ方向の変化が確認できます。

兵庫県の全日制高校1年生も、総数は3万9,348人から3万9,615人へ267人増えましたが、公立は692人減り、私立は959人増えています。兵庫県の入試で見えた動きと、5月1日時点の在籍者データは同じ方向を示しています。

以前のEdu-NEWS動画では、兵庫県公立高校の志願倍率0.97倍を扱いました。0.97倍は入試前の志願者数を募集定員で割った数字です。今回の学校基本調査は、実際に5月1日時点で在籍している高校1年生を集計したものです。同じ指標ではありませんが、志願段階で見えていた変化が入学後の構成にも表れたかを確認する材料になります。

なぜ私立を選ぶ家庭が増えたのでしょうか?

授業料支援の拡充は大きな背景ですが、それだけを原因と決めることはできません。授業料差の縮小、教育内容の比較、定員と学校配置のずれを一緒に見る必要があります。

第一に、2026年4月から所得制限が撤廃され、私立全日制の就学支援金の上限は年45万7,200円になりました。費用面から私立を候補外にしていた家庭にとって、公立と私立を同じテーブルで比較しやすくなりました。

第二に、授業料差が縮まると、コース、補習、進路支援、ICT環境、部活動、学校行事など、教育内容の違いが相対的に見られやすくなります。私立が必ず優れているという意味ではなく、費用以外の比較項目が学校選びに占める割合が大きくなったということです。

第三に、子どもの数が減っても、公立高校の募集定員や学校配置はすぐに同じ割合では変わりません。生徒数に対して募集枠が多い地域で私立専願が少し増えると、公立の未充足が大きく表れます。

「高校無償化」で学校生活の費用はすべて無料になりますか?

いいえ。今回の制度は授業料に充てる支援であり、学校生活の費用がすべてゼロになる制度ではありません。

2026年度の支給上限は、公立全日制が年11万8,800円、私立全日制が年45万7,200円です。しかし、入学金、施設設備費、制服、教材、端末、交通費、修学旅行費などは別にかかります。学校によって金額も異なります。

保護者へ説明する際は、「授業料の支援額」だけでなく、「3年間の総額」を並べることが重要です。「私立高校が完全に無料になった」「公立と私立の負担が同じになった」とは説明できません。

高校無償化は授業料支援であり入学金や施設費などは別と示す図
入学金、施設費、制服、教材、交通費などを含む3年間の総額で比較する必要があります。

公立高校はなくなっていくのでしょうか?

公立高校が一律になくなるとまでは言えません。今後は、人気校と、定員未充足が続く地域校・学科との差が広がる可能性があります。

通学しやすく、進学実績や教育内容が明確な公立校には、引き続き志願者が集まると考えられます。一方、生徒数が減る地域や、学べる内容が十分に伝わっていない学校では、欠員が続く可能性があります。未充足が長期化すれば、学級数の削減、学科再編、学校統合が検討されることもあります。

ただし、公立高校は人気競争だけで測れる存在ではありません。地域に学びの場を残すこと、家庭の経済状況にかかわらず選択肢を確保すること、工業・商業・農業など地域を支える学びを提供することも重要な役割です。

高校選びでは何を比較すればよいですか?

「無償化だから私立」「費用が安いから公立」と先に決めず、5項目を同じ資料で比較することが大切です。

  1. 3年間の総額:授業料、入学金、施設費、制服、教材、端末、交通費、修学旅行費
  2. 教育内容:コース、授業進度、補習、ICT環境、部活動、学校行事
  3. 進路支援:一般選抜、推薦、就職、専門学校、個別相談の体制
  4. 通学と校風:毎日の通学時間、本人が安心して過ごせる環境
  5. 入試制度:専願・併願、第二志望、内申点と当日点、支援制度の申請時期

高校ごとに違いが大きい項目です。説明会や文化祭にも足を運び、数字と本人の実感の両方で判断する必要があります。

高校選びで総額、教育内容、進路、通学と校風、入試を比較する図
公私を同じ比較表に置き、家庭ごとの優先順位を整理します。

塾の進路指導はどう変える必要がありますか?

「公立第一志望、私立は滑り止め」を最初から前提にする進路指導は見直す必要があります。公私の費用・教育・入試を同じフォーマットで比較できるようにすることが出発点です。

塾では、近隣高校ごとに3年間の概算費用、コース、推薦枠、入試方式、通学時間を一枚にまとめると、面談で使いやすくなります。また、私立専願の増減や公立の定員未充足を地域別に確認し、前年倍率だけで安全校・挑戦校を決めないことも重要です。

保護者には、就学支援金の対象が授業料であることと、実際の自己負担を分けて説明してください。支援制度は申請が必要で、自治体や学校の上乗せ制度も異なります。最終的には各校の募集要項・納付金案内と自治体の最新情報で確認する必要があります。

まとめ

2026年度、全国の全日制高校1年生は前年比436人減とほぼ横ばいでした。そのなかで、公立は1万8,220人減り、私立は1万7,834人増えています。兵庫県でも、私立専願者の増加と公立の未充足拡大が同じ方向に表れました。

これは公私の構成が動いたことを示す重要なデータです。ただし、個々の生徒の移動を追跡した統計ではなく、原因を無償化だけに求めることもできません。

学校選びの前提は、「公立か私立か」から「3年間の総額と、その学校で何を学べるか」へ変わり始めています。塾の進路指導も、公私を同じ条件で比較し、家庭ごとの優先順位を整理できる形へ更新する必要があります。

参考資料

この記事の数値は引用いただけます。引用の際は、出典として本ページのURLと、各表に記載した一次資料を明記してください。 出典:スマ塾「高校無償化で私立人気、公立は苦境に」https://smart-juku.syuni.jp/news/high-school-tuition-public-private-shift.html

この記事は塾にどう効くか

公立を第一志望と決めてから私立の併願校を探す進路指導は、前提から見直す必要があります。公立と私立の費用、教育内容、進路、通学、入試制度を同じ書式で比較できるようにすることが出発点です。

ただし『無償化で公立から私立へ1万8,000人が移った』とは説明できません。学校基本調査は個人の進路移動を追跡した統計ではなく、授業料支援以外の要因も重なっています。

保護者への説明材料になるか

なります。特に大切なのは、『無償化』の対象が授業料であり、入学金、施設費、制服、教材、端末、交通費、修学旅行費までゼロになる制度ではないと伝えることです。

面談では、支援後の授業料だけでなく、3年間の総額、教育内容、進路支援、通学と校風、入試制度の5項目を一枚にして比較すると、家庭ごとの優先順位を整理しやすくなります。

進路指導・面談への影響

教科の指導内容が直接変わる話ではありませんが、学校情報の持ち方は変える必要があります。近隣の公私立高校ごとに、3年間の概算費用、コース、推薦・一般選抜、通学時間を同じフォーマットで更新してください。

前年倍率だけで安全校・挑戦校を決めず、私立専願の増減、公立の未充足、募集定員の変更も確認する運用が必要です。制度や納付金は各校・自治体で異なるため、最終確認先も資料に載せておくと安全です。

発信のネタとして使えるか

地域の公立・私立を比較する記事やLINE配信に使えます。全国の数字だけで終わらせず、近隣校の総額、コース、入試方式、説明会日程まで足すと、保護者にとって実用的な情報になります。

『公立高校がなくなる』『私立が完全無料』と不安をあおる表現は避けてください。確認できた事実と、今後起こり得る見通しを分けて書くことが信頼につながります。

塾のホームページ、今のままで大丈夫か診断します

制度の変化を保護者に伝える場としても、ホームページは使えます。スマホ表示・問い合わせ導線・情報の鮮度を、塾専門の視点で無料チェックします。

無料でHP診断を受ける